第一章 初心者編

第1話 「もう一度、初めの一歩」

「う、うーん」

目が覚めた。

とりあえずロードするか。

俺は自分のデータをロードしようとしたが…

[初期化が完了しました]

は?初期化だと?俺はそんなことした覚えがないぞ…

俺は慌てて確認するとそこには

「嘘だろ…」

俺のデータが消えていた。

「俺の3か月がぁ…」

カンスト近くまで上げたデータが今、俺の目の前で消え去ったのだ。

「まあいい(よくない)新しく作り直すか…」

それよりフレンドが全員消えたほうが凹むんだが…

100人近くいたのになぁ…

しかもその中には俺の彼女もいるのになぁ…

『queen』内で出会った彼女がなぁ…

じゃなくて、このこと運営に報告しないとな。

そう思い俺はVRを外そうとしたが

「あ、あれ?」

なんだ?脱ぎ方が分からない…というより始めから装着してない、が正しいのか?

どうやら閉じ込められたみたいだ…

友人にもLI〇Eができないからな…

ゲーム内のチャットをしようにも初期化されているし…

「取り敢えず、初めからと…」

こうして俺はもう一度『queen』へ始めの一歩を踏み出したのだった。


「懐かしいな、この感覚」

そういえば、俺以外の人がいないな。

まぁ、チュートリアルだしいないか。

俺はスライムを倒そうとする。

ダメージが一桁とは…時間が掛かるなこりゃあ…

俺は数十秒かけ最初のスライムを倒した。

「クソが…どうしてこんな目にッ!!」

 俺は武器をしまい素手でスライムを殴った。

30分くらいかかった。だけどイライラしてたのが少し収まった。

「武器が悪すぎるな。これは」

 ちなみにこのゲームは、開始時に4つのジョブを選ぶことができる。

一つ目は剣士、二つ目は僧侶、三つ目は魔法使い、四つ目は守護者だ。

剣士は攻撃、スピードに優れていて、僧侶は魔力や魔法防御が高く、魔法使いは魔法がとても高く、他が平均よりやや低めだ。守護者はスピードこそ遅いが、防御に関しては他のジョブより大分高めであり、攻撃も剣士よりほんの少し低いくらいだ。俺のジョブは剣士だ。

 武器も色々ある。例えば、剣士は剣と盾で僧侶と魔法使いが杖、守護者は盾のみだ。意外にもこのゲームは、バランス調整がしっかりしている。

 レベルが上がれば就けるジョブも増えていき、強さも上がっていく。

大人気ゲームなのでアプデの度にジョブが増えている。今じゃ種類も100種類近くある。まあ俺は全部できてたのだがな。

 俺が最後になっていたジョブは三武器(トリプルウエポン)といって、好きな武器を三つまで使える職業だ。このジョブに変えたいのなら、幾つか条件があったがそれはまた今度話そうと思う。

 そんなことを話している内に、チュートリアルが終わった。今から『タウン』へと転送される。

周りが光った。転送の合図だ。

俺の体は光に包まれた。


 『タウン』についた。やっぱり懐かしいな、この感覚。初心者に戻ったみたい…というか戻ったのだがな。

 町中は忙しそうだった。走っている奴、なにやら困ってそうな奴とか色々いた。

 何かあったのだろうか。もしかしたら俺の初期化とも関係あるかもしれないな。

そう思い、俺は近くのプレイヤーに声を掛けた。

「あの、なんかあったんですか?」

「ん?なんだいアンタ?今忙しいんだ!あっちにいってろ!!」

なんだコイツ。この俺がわざわざ声をかけてやったってのによ。

「おい、お前。この『夜桜』のクロスが声を掛けてやったのになんだ?その態度?」

「何言ってんだお前。『夜桜』はお前みたいな初心者じゃないだろう。『夜桜』はもっと強くて、それにこんな初心者向けの町にはいないだろ。」

 そうか…そうだな。確かに俺は世界でも何人かしかいないレベルカンスト勢だからな。

「そうだ!お前、『夜桜』がどこにいるか分かるか?」

知らないかもだが一応聞いておこう。何か分かるかもしれないからな。

「一応分かるが…アンタみたいな初心者が行っても、相手にはされないぞ。ほら、ここだ。」

地図を見せてくれた。どうやら『夜桜』は町の中心部にいるらしい。

「うるせえよ!まあ、ありがとうな。」

俺は名も知らぬプレイヤーに礼をして、『夜桜』のいるほうへ向かった。

そして、町が騒がしい理由が分かった。

どうやら『queen』の世界に閉じ込められたのは俺だけではなかったようだ。大好きなゲームの世界にいけて喜ぶ者もいれば帰れないということに絶望する者もいる。人それぞれだ。

俺はどちらでもない。

 しばらく歩いていると、あるプレイヤーに声を掛けられた。

「ねえ君、初心者さん?何か困ったことでもある?」

思わず、「俺は『夜桜』のクロスだ」なんて言いそうだった。さっきみたいになんのは面倒だ。ここは普通に…

「そうなんですよ!『夜桜』の人を探していて…」

高圧的ではなく、もっとこう…親しみやすく?

「ああ『夜桜』さんたちならあっちにいるよ」

彼が指を指した方向は、さっきのプレイヤーが言ったところでもあるな。

「そうだ!せっかくだしフレンドになりません?教えたいことも山ほどあるし!僕はウルフっていいます。よろしく!」

この世界に再び来て、初のフレンドだ。

「ああ、よろしく、俺はクロスだ。」

「よろしくね!クロス君!!」

ウルフ、か。いい奴なんだろう…きっと…

そう思いつつ俺は『夜桜』のもとへ足を運んだ。

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