有識者達

 「


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 〈ゴリバス〉来てる!!


 〈ゴリバス〉〈ゴリバス〉!!


 逃げて!!


 あ、これ無理・・・


 これ勝てんくね?


 クソ調整だろ


 〈ゲーム内機体〉完全に息してない


 〈ゴリバス〉の硬直潰しにきてんのヤバすぎ


 あのサル、サイレント追加ってマジ?


 これ〈ゴリバス〉回避無理くね?


 ヤバい!!


 はよ、移動!!


 退避ーーーーーー!!!


 へ?


 え?


 は?


 は?


 は?


 は?


 ・・・・・・



 なに!?あのキレイな機体!?


 〈ゴリバス〉跳ね返した!?


 クリア!?


 そのまま、斬ったのか!?

 

 クリアした!!


 クリア!!

 

 決めた!!カッケエエエエ!!!


 ・・・・・・


 あれたぶん、〈アファム〉だよな?


 このゲーム、クリアパーツが硝子みたいに描写されるのね


 機体のスキルでレイドボスの攻撃跳ね返せんの!?


 レイドボスの攻撃なんですけど!!


 ほとんど一人でレイドボス倒してんのぶっ壊れ過ぎるだろ


 レイドボスって大人数で協力してやっと倒せる奴じゃなかったっけ?

 

 これ限定品のクリアキットの〈アファム〉じゃない?


 〈アファム〉に攻撃反射なんて設定無いでしょ


 たぶん超必殺ウルトスキルって奴じゃないか?

 

 それありなの?


 無法がすぎないか?


 あれ、枠あるのにスキル欄にでねえってコメント見た!出たのか!


 排出率クソな感じ?


 プラモスキャンのガチャはキツ過ぎ!!


 反射って、たぶんクリア外装に何かあるんじゃないかな?


 砕けて外装無くなってるし・・・


 なんで飛ばないで歩いてんだ?


 完成度とかにもよるのかも・・・?


 クリアだからコックピット丸見えなの目立つな・・・


 殺し屋みたいな見た目してんな


 白スーツにサングラスの殺し屋って何かの映画で観たわ


 女性アバターだから、どっちかというとアニメにいそう


 〈リアルプラモ〉ってここまで壊れた性能出せる様になっちゃったの?


 〈リアルプラモ〉は完全に息を吹き返した


 機体名が〈スケルトン〉って、確かに中身丸見えだけど・・・


 よく見ると結構フレームも作り込まれてね?


 反射もヤバいけどスピードもイカレてる


 あ!〈ジークフリート〉さんだ!!


 生き残ったのか!さすが第8位ナンバー・エイト!!


 〈ジークフリート〉って〈ジーク〉さんのこと?


 〈ゲーム内機体〉〈ジード〉のカスタム機〈ジードフリート〉の使い手


 通称、お人好しの〈ジークフリート〉


 アプデ初日だから、初狩り狩りに行ってたんじゃないのか?


 〈荒野〉エリアでいつものお節介してるの見た


 実質サル一匹倒したのこの人だしなぁ


 周りのプレイヤー集めてただけっぽいけどね


 これで〈ジード〉使いの星から〈ゲーム内機体〉の星にランクアップしそうじゃね


 ベテラン面してる奴等はこの人を見習ってください


 〈スケルトン〉と何か、話してる?


 フレンドなのかな?


 ・・・・・・・・・

                                     」





 

 配信のコメント欄は大盛り上がりだった。

 このボス戦まで無名だったストリーマーの配信を見ながら、ベッドに寝っ転がってスマホを見ている高校生の女の子、金剛 葉美こんごう はみは、ため息をつく。


 「はぁ~~~~・・・」


 コメント欄で語られていることは主に3つ


 〈リアルプラモ〉の性能とスキル


 レイドボスをほぼ一機で倒した、硝子の機体とそのプレイヤー


 〈ゲーム内機体〉乗りの中で唯一わかりやすい戦果を上げた〈ジーク自分


 

 まさか撮られているとは思っていなかった・・・


 あの〈スケルトン〉に乗っていたプレイヤー〈フルカゲ〉は見事に作戦を成功させた。

 初心者である〈フルカゲ〉の負担が大きすぎる作戦だったにも関わらず、だ。

 ノーダメ前提で、味方の援護はほぼ無し、確実に護衛が立ち塞がる、そのうえ反射の効果がレイドボスの攻撃にまで適用されるかわからなかった。


 ・・・あれはやらないよりはマシ、というレベルの賭けだった。


 前半で〈ゲーム内機体〉に乗っていた古参プレイヤー達が脱落した時点で、数的に敗色濃厚だったのだ。

 それを勝利まで引き上げたのは間違いなく、〈リアルプラモ〉達の性能と〈フルカゲ〉というプレイヤーだ。

 

 そこは、素直に賞賛と感謝を伝えたい。

 

 問題なのは、その中に〈ジーク葉美〉が入ってしまっていることだ。

 それも〈ゲーム内機体〉の希望として。


 あの戦いにおいて、〈ジードフリート〉はほとんど何の役にも立っていない。

 サルを倒せたのだって、〈リアルプラモ〉に乗るプレイヤー達の協力のおかげであって、〈ジーク〉の機体はサルの周りを飛び回っていただけだ。

 〈フルカゲ〉には大口を叩いたが、実際にサルと戦ってみたら逃げ回るのに精一杯という無様っぷりである。


 確かに〈ジードフリート〉は愛機と言って良いほどに使い込んだ。

 愛着もあるし、一番手に馴染む機体となっている。

 だが、それは〈ジーク〉というキャラクターに必要だったから、という理由でそうなっているに過ぎない。

 

 必要だったのはゲーム内における〈強さ〉。


 〈ジーク〉は、善人であり、正義を好む、物語の英雄の様な男性をイメージしてキャラメイクした。

 将来、声優としてデビューするのが夢である葉美にとっては、演じるための役柄として自ら手がけた、練習用のキャラクター。

 金剛 葉美はロールプレイで遊ぶことを通して演技の練習に繋げようと『バープラ』を始めたのだった。

 それ故に〈ジーク〉のキャラ崩壊が起きていたり、中の人が女性だとバレた時はキッパリとデータを消すと決めている。

 そういう覚悟のもと、本気で〈ジーク〉を演じている降ろしている


 本気の結果、その象徴が第8位ナンバー・エイトという称号。


 だから初心者の手柄に乗る様な格好になってしまったのは不本意だし、〈ゲーム内機体〉で戦うことを人々に望まれるのは英雄に必要な〈強さ〉という点でこれから問題となる。


 前提として、ゲーム内で英雄の様なキャラクター性を際立たせるには、〈強さ〉が必要不可欠だ。

 なにせシナリオが無いのだから。

 負けっぱなしで英雄にはなれない。

 もちろん、負けるのが嫌だというのもある。


 だから〈強さ〉を求めるなら、〈リアルプラモ〉に乗り換えるべきだ。


 ただ、〈ジーク〉は人々に〈ジードフリート〉に乗ることを望まれてしまっている。

 これを葉美なら「そんなの知らないよ」と周りの意見を無視できるのだが、〈ジーク〉は違う。

 〈ジーク〉は〈金剛 葉美〉ではないのだ。

 〈ジーク〉に命を吹き込んでいるのは葉美だが、葉美自身をそのまま使うのは違う。

 要するに、自らが創造した〈ジーク〉というキャラクターが人々に望まれたことを無視するのは、解釈違いな気がしてならないのだ。


 だが、〈ジードフリート〉で〈リアルプラモ〉達に張り合えるのかは疑問しかない。

 〈スケルトン〉の様な規格外を見てしまったのなら尚更だ。

 

 「・・・PvPならまだなんとか・・・いや、厳しいかな・・・」


 プレイヤースキルでカバーするには限界がある。

 

 「どっちにしろプラモデルが作れないと話にならないんだよね・・・最後に作ったのは・・・小学校の時に作った食玩だっけ?」


 まずは選択肢の確認からだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る