忠告は最後まで忘れずに
ガガガガガガガガガガッ!!!
胸部バルカンで蜘蛛型ドローンの最後の一匹をハチの巣にする。
「・・・よし、ちょっと危なかったがこれでクリアだな。」
〈ハイ・マニューバ〉のデメリットのせいで危ない場面もあったが、〈ブースト〉が使えるようにになればこの程度は敵じゃない。
・・・〈ブースト〉が回復した瞬間、(見たまんま)蜘蛛の子を散らすように逃げるわ、プロペラドローンを全機落としたら、蜘蛛は隠れながら移動するという小賢しい手に出るわで、かなり手こずった。
そのせいで来れたら良いな、くらいの気持ちでいた〈廃都〉エリアの目前まで来てしまっていた(実はもう少しでミッション失敗だった。危ない、危ない)。
意外と侮れないAI積んでないか、こいつら?
ともあれ、これでクエストはクリアだ。
後は、受付カウンターに戻って報告するか、町に戻って完了のメールを送ればクエストクリアとなる。
だが、まあ・・・せっかく来たんだ。
〈廃都〉にも寄って行こうじゃないか。
後半のドローン共が結構手強かったので無視していたが、実はチラホラ野生のエネミーっぽいのも視界に入っていた。
半分サイボーグっぽい
遠距離武器は持っていなかった様で、〈スケルトン〉に追いつくことはできず、普通にドローンを追っているだけで置き去りに出来たから放置していたが・・・、
「確か野生のエネミーも倒すと金になったはずだよな。」
確か回復アイテムとかあるらしいし、他にも格納空間の設備強化とかでゲーム内通貨は必要だったはず。
ドロップ、という形では無く、専用の施設に行くと討伐報酬が貰えるシステムらしいから、そこも後で見ておかないといけない。
で、どうせ行くなら、貰える物は多い方が良い。
〈廃都〉にも野良のエネミーはいるだろうし、クリア報酬に加えて、ちょっとばかし小遣い稼ぎして行こうじゃないか。
それに〈スケルトン〉の性能も大体わかった。
本気で逃げようと思えば、大体の奴からは逃げれる機動性をしている。
ソースは後方から聞こえてくる声。
「ぉ~い!!待ってくれぇ~・・・!!」
「まだ追いかけて来るのか・・・、暇なのか?」
ドローン共の討伐中(猛スピードで蜘蛛を追跡中)に話しかけてきたプレイヤーだ。
〈ゲーム内機体〉(・・・確か〈ジード〉って機体だっけか・・・?)のカスタム機に乗っていることからゲーマーか、少なくとも〈見る専〉のプレイヤーだろう。
話かけてきた時、「君スゴイn・・・「ごめん、クエスト中」
そう言って野良エネミー共同様、置き去りにしてやったのだが、諦めずに追いかけて来たっぽい。
なんで、逃げたかって?
だって、蜘蛛見失ったらダルイし・・・、今日は人と話すことが目的じゃないし・・・?
まあ、今日はゲームの世界を優先したかった、というだけだ。
プレイスタイルの話なのだから、とやかく言われる筋合いは無い。
というわけで、〈ブースト〉を起動し、〈廃都〉に入る。
〈廃都〉は〈荒野〉よりもビルなど建物のオブジェクトが多い。
まさにコンクリートジャングルって感じだ。
見晴らしの良い〈荒野〉ならともかく、この障害物だらけのエリアに〈スケルトン〉のスピードで入ってしまえば、さすがに撒けるだろう。
「!・・・〈廃都〉は、・・・い・・・あぶな・・・」
何か叫んでるが、相手にする気はない。
すまんが、別の日で俺の気分が良い時にまた会おうぜ。
会えたらな。
「・・・追いつけなかった・・・、早すぎだ・・・、やっぱりアプデが入って今までの〈リアルプラモ〉とは完全に別物になってる・・・」
そう呟いて、これまで愛機として使って来た〈ジード〉の高機動カスタム機〈ジード・フリート〉を着地させる。
〈ジード〉は〈ゲーム内機体〉の中では屈指の機動力を持つカスタムが可能な機体。
そして、古参プレイヤーであるジークはこの〈ジード・フリート〉を用いて、1on1トーナメント大会のベスト8まで登りつめている。
少なくとも〈ジード〉使いにおいて自分に勝てるプレイヤーは5人はいない、と自負していただけに、今回のアップデートの影響を考えずにはいられない。
「このぶんじゃ、〈ゲーム内機体〉の時代は本当に終わるかもな・・・っと!そんなこと言ってる場合じゃない、追いかけないと!」
そもそも、この〈荒野〉に古参プレイヤーであるジークがいたのは新しく〈バープラ〉を始めた初心者プレイヤーに警告をするためだった。
『〈廃都〉は今危ない』と。
このゲームは一部の人間にクソゲーと言われている。
その意見を言っている多くは、プラモデラー達だ。
『プラモゲーとして売り出しておいて、肝心のプラモデルが〈ゲーム内機体〉に勝てない』
『苦労して作ったプラモデルが簡単に破壊されるのが辛かった。』
プラモゲーとして買った人間にとっては確かにクソゲーだったろう。
それはプラモゲーとして売り出して、調整をミスったメーカーが悪い。
だが、プラモにこだわらず、ただのVRMMOとして見ればこのゲームは間違いなく神ゲーなのだ。
アップデートで、そのバランスがやっと調整された。
クソゲーの汚名を返上し、神ゲーとして名を馳せられるかもしれない時なのだ。
無粋な初心者狩りに睨みを聞かせ、理不尽なゲームオーバーを迎える場所に足を踏み入れる前に情報を教える。
そういう、おせっかいをするために、ジークは先のエリアから〈セントラルタウン〉に戻って来ていた。
自分の〈ジード・フリート〉なら、最速で初心者プレイヤーの元まで行ける。
ならば自分が適任だろう、そう思って。
しかし、予想外だったのは、アップデートされた〈リアルプラモ〉の性能。
まさか、追いつけないなんて・・・。
あの硝子みたいな装甲の機体がやっていたクエストは初心者クエストだ。
一番難易度の高い奴だけど、状況から見て初心者だと推測できる。
そして、ライフルなど遠距離武器を持っていなかったということは、たぶん知らない。
「クソ!いくら機体性能が良くたってどうにもならないぞ!レイドボスと鉢合わせちまう!!」
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