監視装置?

ひとまずは、ひたすら点滴。


左腕に刺さる針から点滴を入れつつ、チューブの分岐点からは注射器で必要な薬剤の投与を受けていく。


点滴器の下部には大きな50mlシリンジがセットできるようになっていて、そこからも薬剤がゆっくりと押し出されて点滴チューブと合流して投与されている。


薬剤の名前が記載されていたので、ネットで検索して調べてみると、点滴以外の薬剤は、利尿薬と、心臓の拍動を良くする薬だった。


点滴薬と心臓の拍動を助ける薬は、これから五日間、24時間ずっと継続投与される事になる。


とにかく現時点での治療は、体中に蓄積されてしまっている水分をできるだけ早く、出せるだけ外へ出すこと。これが何よりも早く処置すべき事だったようだ。


そして、『安静』が必要。安静、とは具体的に言って何をするのかと言うと、私の場合は、『なるべく動くな』という事だった。


利尿薬で何度も何度も排尿したくなるのだけれど、トイレまで行く事すら、現時点では許されない。ベッド横で尿瓶に排泄し、看護師さんを呼んで回収してもらい、新たな尿瓶をもらう。


大はどうするのか?

看護師さんを呼んで、車椅子に乗せてもらってトイレまで連れて行ってもらうのだ。

排泄ごとに看護師さん達の手を煩わせる事になるのが申し訳なく、恥ずかしかった。


あと、心電図のデータをリモートで収集できる携帯型のセンサーを身体に装着させられた。


胸の上部に二箇所、左脇腹の辺りに一箇所、合計三箇所に端子のある丸型の粘着シートが貼り付けられ、その端子に小さなクリップ状のセンサーを取り付け、赤、黄、緑の配線が伸びており、それらが手の平に収まるサイズの携帯型端末に繋がっている。三箇所のセンサーで集めた心電図のデータを、電波で飛ばして、ナースセンターの受信装置で常にモニタリングしているらしい。有効範囲は、この階の病棟内。


要はこれを装着していれば、私の心臓がいつ止まっても看護師さん達がすぐに気づく事ができ、駆けつけてくれるのだ。実際のところ、私が寝返りしてセンサーが一つ外れてしまったり粘着シートが剥がれてしまったりした時には、看護師さん達が駆けつけてきて確認してくれた。


この病棟エリア内なら、この装置で監視しているので、私がいつ意識を失って倒れても、対処してもらえるので大丈夫という事なのだ。安全装置も便利になってきたものだ。


とはいえ、これを付けている限り、下階にあるコンビニにすら一人で行く事ができない。センサーからの信号が受信できなくなれば、すぐに異常を察知されてしまう、行動範囲制限の監視装置としても機能している訳なのだ。


ここから回復に向かう数日間、おやつが欲しくて仕方がなかった。チョコレートが、食べたいよう。


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