病室へ

入院という事になり、一旦は診察室を離れて、検査結果待ちをしていた場所にベッドごと移動してまた待機。入院する病室の確保や、諸手続きの用意などに時間がかかるのだろう。


やがて、看護師さんから書くべき書類を幾つかまとめて手渡された。それらに目を通し必要事項を記入しつつ、携帯で家に連絡を入れて事情を説明した。母には犬の世話をお願いして、保証人には別生計の人が必要との事で、姉に連絡して同意をもらう。

 

姉は元看護師で慣れており、病室がどこか決まったらまた教えてくれ、着替えやスリッパ、スマホの充電器のアダプタなど、これから取りに行き持ってきてくれるという。

もう自分は外に出られない状況で、後から姉が色々持ってきてくれて大変助かった。


後から色々と判明することなんだけど。

例えば財布にはとりあえず十分な現金はあったけど、私が動いていい病棟内では自販機で千円札までしか使えないなど、パンフレットには記載の無い制約があった。意外にも、飲み物は自由なのだが、自分でペットボトル飲料を確保しないといけなかったり。冷蔵庫や洗濯機乾燥機の使用には、TVカードの購入が必要となる仕様だったりと(これも一万円札、五千円札は使用不可)。


兎にも角にも、小銭と千円札が支配する国で軟禁状態で何日も過ごす事になるのを、この時の自分はまだわかっていなかった。


やがて病室の準備ができたとの事。

ベッドに乗せられ点滴を入れたまま、⚪︎階の端にある四人部屋の病室まで移動。

新たなベッドへ移る。


カーテンで区切られた、二畳弱のスペースに、ベッド、TV台に小さな冷蔵庫、小卓が所狭しと並ぶ。


窓から見える田舎の景色はなかなか良く、それが唯一、自分の心を癒やしてくれていた。

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