入院するの?死ぬの?
やっとお呼びがかかった。
検査結果が出て、診断が下されたのだろう。
またベッドごと、看護師さんが診察室へ移動させてくれる。
診察室では、最初に対応してくれた医師だけでなく、もう一人、眼鏡をかけた二十代半ばくらいの若いひょろっとした男性医師がいた。こちらは内科が専門の先生で、これから心臓の動きを超音波エコー検査の機械を使って見てくれるという。
最初の泌尿器科の先生は、たまたま今日当番だったもう一人の内科の医師をわざわざ呼んでくれたようだ。言葉少なく、内科の先生に目配せして、後の対応をバトンタッチした。
この時点で、何か普通ではない、
由々しき事態が起きているのだと、
わかる人にはすぐわかるんだろうと思う。
自分はまだ全く気づかず、言われるままに、ベッドに横づけされた装置で内科の先生自ら行う心エコー検査を受けながら、説明を受けていた。
右手でセンサー端子を私の胸部に角度を調節しながら当て、モニター画面で確認しつつ、リアルタイムで説明してくれた。
医師曰く、心臓の動きがかなり弱っていて、ポンプ機能がありえないくらい低下しているとの事。尿量の減少や全身の浮腫、うっ血、肺水腫等、一連の症状は、弱った心臓が元々の原因であるのか、それとも他の原因で結果的に心臓が弱っているのかはわからない。
とにかく、このまますぐに入院しましょう。
それくらい酷い状態なのです、と。
は?
はい?!
医師の言葉を呑み込むのに、数秒かかった気がする。
入院?なんも準備して無いよ?
来週の仕事は?引き継ぎなんもしてない。
毎日の犬の世話は?同居の母に頼むしかない。
別居中の妻へ知らせる?いや必要ない…
軽くパニックで考えこむ自分の様子を伺いながら、最初に応対してくれた医師が、こう打ち明けてくれた。
その場では言わなかったけど、最初診た時、かなり悪い状態だという事がわかっていた。だから検査結果を揃えて、内科専門の医師にも来てもらったのだと。
一度、家に帰って、準備を...
内科の先生が、私の目を見て言った。
危ないのでやめた方が良いですよ。
脅す訳じゃないですけど、死んでしまうかもしれないですよ、と。
自分の命を守ろうとしてくれている医師達の気持ちが、痛いほどに伝わってきた。
観念した。
緊急入院に同意した。
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