第4話 .....焦らすからあたしの愛は歪んでくんだよ
「ねぇりとさん、あたしお腹すいちゃった」
「お腹すいただぁ......?カップ麺じゃだめか?」
輪廻の家には何故かカップ麺.......というよりも、直ぐに作れる冷凍食品があちこちにあるのだ。
まぁきっと自炊しない系女子なんだろう。
「あたし、りとさんの料理が食べたいなぁ♪」
「下手だからなぁ.......めっちゃ嫌だわ」
「いやいや、りとさんの作る料理は美味しいじゃんか」
「お前それな??まじ良くないぞ??」
「どうして?」
俺は今まで学校でよく見た事がある......残念イケメンというのを。
せっかく顔はかっこいいというのに、体育のテストでは全然な奴がいる。
そしてそれを見てため息を着く女子.......いや本当に、勝手に顔だけ見て、そして期待して。
ダメだったら失望するのは良くないことだろう。
「まぁお前に分かりやすく言うなら.....仮にクソかっこいいVtuberがいるとする。そしてそいつが現実でもイケメンだと、そう言ってるようなもんだぜ?」
「それって良くないことなの?」
「VTuberからしたら嫌だろうよ」
「あたしからしたらどうでもいいけどね」
「俺とお前の違いだな......そこは」
まぁ価値観っていうのはどうしてもすれ違うものだろう......しょうがない。
「......まぁ別に料理はできるよ、人並みには」
「さっすがぁ!!流石りーとーさん♪」
「それにしてもお前......今まで冷凍食品だけで生きてきたのか?」
「え?そうだけど?」
「お前は栄養失調にでもなりたいのかよ」
コンビニ弁当っていうのは味が濃いし、栄養は考えられないで作られてるから、たまにはいいと思うけど毎日はダメだと思うんだよな......
「......自炊して何か不都合でもあるのか?」
「あぁ......あるよ、たくさん」
「例えば?」
「時間がかかるし......ぶっちゃけだるいし」
「もっと深い理由があると思った俺が馬鹿だったわ」
こいつは決してバカそうじゃなさそうだから何かあると思ったんだが、そんなこと無かったらしい。......まったく。
「まぁともかく、作ってよりーとーさん♪あたし、りとさんの作った料理が早く食べたいなぁ♪」
「......へいへい」
とりあえずこの家にある食材を確認しようと冷蔵庫を開ける......あぁ、なるほど。
輪廻とこの契約をした後、俺は買い出しに行っていた。
てっきり輪廻が作るのかと思っていたが.....こういうことだったらしい。
「ふふっ、楽しみだなぁ♪」
文句のひとつでも言ってやろうかと思ったが.....俺はあの素敵な笑顔を壊すことなんて出来なかった。
「.......しょうがねぇ」
不本意だが俺は夜ご飯を作ることに決めた。
メニューは......炒飯でいいだろう。炒めるだけだしな。
そう思い、俺は料理をし始める。
「そういえば輪廻って」
「ん?どうかした?」
作ってる途中暇なので、俺は輪廻と雑談することを決めた。
「YouTubeやってて何か辛かったこととかないのか?」
「辛かったこと......かぁ」
輪廻は少し考える素振りを見せ、そしてそれを言う。
「辛いことと言うよりめんどくさい事だけど....アンチと信者......かな」
「アンチと信者?」
「うん.....昔、あたしの動画のコメント欄であたしのアンチがあたしを侮辱するようなことを言ってね」
それはまぁ......よくあることなんだろう。そこそこだった俺でさえアンチがいたんだ......有名YouTuberであるこいつに居ないはずがないんだろう。
「まぁそれが気に入らなかったんだろうね.....そのコメントに対してあたしの信者が反論してね....それが結構めんどくさいし、アンチなんて無視すればいいのにっていう話かな」
「まぁでも.....信者っていうのはそういうもんだし、仕方ないんじゃないか?」
「そうなんだけど、いちいちそのコメントを真に受けて傷ついて欲しくないよねぇていう」
「変なところで優しいんだな」
「信者っていうのはあたしのことが大好きなんだよ?だったらせめて優しくするべきだよ」
まぁそれもそうか......信者っていうのは自分を肯定してくれる存在だからな、それに自分の作品を褒めてくれるからモチベにも繋がるし。
「あぁ.,....ちなみにあたしはあなたの狂信者だよ」
「聞いてねぇよ」
「冷たいねぇ」
「よく言うだろ?馬鹿と天才は紙一重のように、アンチと信者も紙一重ってな」
「.....まぁそうなんだよね、アンチと信者は少し似ている」
対義語ではあるが、本質なところは似ている言葉って結構あるよなぁこの世界。
「まぁでも.....あたしは信者が好き。自分を肯定してくれるから。でもアンチは嫌い、あたしを否定するから」
「......俺は別にそういうのどうでもいいんだよな、アンチだとかそういうの」
「そなの?」
「だって、気にしたって仕方が無いだろう?逆にアンチは反応されたら嬉しいんだからな」
「......へぇ、でもあたしの記憶だとりとさんは信者にもコメント返信とかしなかったよね」
「うぐ......」
言えない......アンチコメントを見た瞬間に心が爆発する豆腐メンタルだなんてバレたくない.....。
「よくもまぁ覚えてるなそんなこと......」
「まぁあたしアンチになりかけだったしね」
「......嘘だろお前」
「だってあたし、昔は貴方に認知してもらうので必死だったからね」
「.....こっわ、なりかけだったのかよ」
「コメントとか返さなかいからかまってもらうために頑張ったんだよねぇ♪あたし」
それはまた......ほんとにアンチと信者っていうのは紙一重なんだな。輪廻でそれを思い知った。
「んまぁ結局.....それを行動に移すことはなかったんだけどね」
「おぉ、なら良かった」
目の前の少女が俺のアンチだなんて怖いにも程があるだろ.....ガチで。
「まぁでも.....それだと色々とダメだと悟ったあたしは正攻法で行くことにしたんだよ」
「正攻法?」
「あたしが有名になること.....それがあなたに近づくには最も効果的だと思ったんだよ」
「なるほどな、そういうことか」
「そゆこと、有名になってあなたとコンタクトを取ろうとした」
でも正直大物YouTuberってその頃はあんま好きじゃなかったんだよな......まぁただの嫉妬でしかないんだが。
「だからあたしは死にものぐるいで頑張った。辛い時もあったけど、あなたのためならと考えたらそんなこともどうでも良くなった」
「......もしかして」
「そう.....あなたは急に居なくなったんだよ」
それを言った瞬間───────輪廻の雰囲気が変わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます