息をするように

色葉みと

息をするように

 何やら僕は優しいらしい。


 百人に聞いて、百人がそうだと認めるわけではないだろうけど。

 優しいと言葉をかけられることが多いのだ。


 優しいと言われるときは、僕なりのコミュニケーション術を披露しているときがほとんど。


 相手の話を

 相手へと伝える言葉を吟味する。

 相手がどう思うかを考えて行動する。


 僕にとってはどれも欠かせないこと。


 相手に良い印象を持ってもらうために。

 相手に誤解を生ませないように。

 相手と円滑な関係でいるために。


 蓋を開けてみれば、全部自分のためだ。

 この優しさは僕が臆病だ、とも言うことができる。


 そもそも優しさとは何なのか?


 それはきっと空気のようなものだ。


 時に温かくて、時に冷たくて。

 時にゆるんで、時に張り詰めて。

 時にゆっくりで、時に早くて。


 時と場合によって、無数に形を変えて。

 でも、いつも僕らのそばにあって。


 それが、優しいということなのだろう。


 優しさは、立っているところによって、見える形も感じる温度も変わる。

 冷たさにも厳しさにもなり得る。


 だからこそ僕は、優しくありたい。

 息をするように、優しくありたい。


 ——臆病な僕を、守るために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

息をするように 色葉みと @mitohano

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ