ポンコツ幼馴染は生徒会長

ウイング神風

ポンコツ幼馴染は生徒会長

『今回の放送部のゲストは……なんと我が高校。彗星高校の生徒会長! 川村榛名さんです』

『みなさん。こんにちは。生徒会長の川村です』


 放送室から聞こえるのは美しい声の持ち主は饒舌に挨拶をする。

 俺は放送室を覗くと、榛名の方を眺める。彼女はヘッドホンを着用し、マイクの前で語っている。

 その姿は大和撫子のように黒い長い髪に太陽にであったことがないような白い肌。顔の輪郭はヴィナスの彫刻のような美しく、黒な瞳は綺麗な黒で、誰にも懐くような笑顔で放送室の中で花を咲かせている。

 俺の幼馴染でもあり。この彗星高校の生徒会長でもある川村榛名は自慢な幼馴染でもあった。

 彼女のサポート役で俺はここにいるのだけど。どうやら、俺のサポートを受けなくても、問題ないだろう。

 放送部の港が榛名に質問を問いかける。


『さてさて、うちの孤高の花と呼ばれている川村生徒会長にお便りがあります。生徒会の仕事お疲れ様です。川村生徒会長はどのような信念を持って仕事に励んでいるのでしょうか?』

『うーん。特に特別に何か理念を以て行動しているわけでまりません。強いて言えば、学校の理念に基ついて行動することです。我が校、彗星高等学校は素晴らしい理念がありますが、皆さんご存知でしょうか。自分らしき自由に生きること。学ぶ大切を味合うこと。より良い未来を創作すること。私たちはその理念のもとで生徒会を運営しています。特に自由に生きることは、この高校の長所になっています。我が校には誇れる部活もあります』

『ウヒャ! 私、川村生徒会長なら抱かれたいです』


 ワハハ。と校舎から笑い声が響き出す。

 うん。さすがは俺の幼馴染だ。うまく話をまとめている。

 俺なんていらないじゃないか、と思うくらい、素晴らしいスピーチだ。

 彼女はこの高校のことを第一に考えて行動しているのが、わかる。彼女は心優しく、責任感が強い塊なのだ。

 だから、こうもスピーチを繰り広げられるのだろう。

 とは言え、俺はここにいる理由がある。

 実はこう見ても彼女はあまりにもポンコツなのだからだ。


『では、放送部からの放送でした! また次の昼休みに』

『みなさん。良い高校生活を』


 やがて、放送時間が終わると二人は挨拶を交わし締めに入った。

 ここに至って、問題はなさそうに見える。

 けど、俺は注意をして、彼女の行動をよく観察する。


「では、私はこれで」

「はい。お疲れ様でした! 川村生徒会長」


 榛名がお辞儀をすると港が元気よく言葉を交わす。

 そして、榛名は席から立ち扉を開き、出ようとすると……


「あ……」


 ……何もないところで転倒する。

 足が滑ったのか、前へと転倒し出そうとする。

 スローモーションのように俺は慌て出す。彼女を支えて、転ばないように体重バランスを調整する。

 結果的にお姫様だっこのような姿になってしまった。


「……危なかったな」


 間一髪で危機は去った。

 でも、お姫様抱っこというのは少し恥ずかしい体勢でもある。

 ドキドキと彼女の鼓動が俺の耳まで届く。

 そして……


「ありがとう! 勝氏! 大好き!」

 

 いきなり榛名は俺を抱きつくように腕を回してくる。

 何してるんだ! このポンコツ生徒会長!


「ちょ、ちょっと。ここで抱きつけないでくれ」

「ええ。いいじゃん。恋人同士なんだから」

「人前を気にしような。誰か見ているかもしれないぞ?」

「そんなの気にしなくていいのに」

「ダメだろ? お前は孤高の花だ。せめて学校では良い姿を見せなよ」

「硬いな。勝氏くんは……」


 そういうと、榛名は俺から腕を離してから自分で立つ。

 俺はため息を吐き出す。

 さっきの場面。誰にも見られなくてよかった。俺たちの関係上。表、学校では秘密にすると約束しているのだ。

 なぜならば、俺たちが付き合っているということが世間にバレたら、生徒会の地位が揺らぐ可能性もあるからだ。

 

「勝氏くんの成分をチャージできたし! 私、生徒会の仕事に取り掛からないと!」

「おう。頑張れよ」

「うん!」


 榛名はそう言いながらテコテコと廊下を去っていく。

 あまりにも可愛らしい走り方に俺は彼女を注意を払う。


「転ぶぞ」

「きゃ」


 ……ほら、言わんこっちゃない。

 2回目の転倒は流石に助けられなかったのだ。

 まあ、誰にも榛名のポンコツを見られなかったからセーフなんだけど。

 この後の仕事は大丈夫なのか? 


◇◇◇  


 放課後になる。

 俺はいつも通りに生徒会室へと向かっていく。

 すると、生徒会室は慌ただしい声が響いてくる。

 一体、榛名は何をやらかしたのだ? と気になる。

 が、考えても仕方がないと思った俺は扉を開く。


「……ああ。勝氏くん。丁度よかった。今、資料の整理中でね」

「一言いいか? 整理中なのにどうして資料がばら撒けられているんだ?」


 そう。生徒会室には資料が乱雑に散らかっていた。それもどれもが貴重な資料なものでもあり。どれも処分できそうにない資料だ。

 どうしてこうなったのか、顛末を聞くことにした。


「一体? 何をやらかしたんだ?」

「去年の資料を探そうと思ったら、こんなことになった」

「要は探し物が見つからなかったから、全部引っこ抜いたってことだな?」

「……おっしゃる通りです」


 榛名は申し訳なさそうにペコペコと頭を下げる。

 この榛名のポンコツの一つは整理整頓ができないことだ。

 こうも乱雑に資料がばら撒けらていたら、こんな対応するのに日が暮れてしまう。


「じゃあ、俺帰る」

「ちょっと待って! 本当にピンチなの! 助けて!」

「わかった! わかった! 腕を引っ張らないでくれ」

「ふえ。ありがとう! 勝氏くん!」


 鼻水を垂らしながら礼を言われる。どうやら、本当にピンチらしい。

 何やってるんだが、この生徒会長は……


「まずは年別に整理するぞ。片っ端ら整理するからな?」

「はい。お願いします! 先生!」

「お前の幼馴染だろうが……」


 というわけで俺は榛名の資料整理を手助けした。

 部屋中に散らばっている書類を年号別に整理することにした。まず寛容に10年前、5年前、最近の資料の三束に分けてから、これ以上を分けていく。

 時間を食うものだけど、ここでちゃんと整理しないとまた資料がばら撒けられる可能性があるからだ。

 ここは徹底的にしないといけないことなのだ。

 しばらくすると、俺たちは資料の整理できた。

 綺麗に年号毎に整理されて、誰が見ても整理整頓が徹底されているようにも見れる。

 我がながら、こんな大きな整理は大晦日の掃除以来だ。


「ありがとう! 勝氏くん! 助かったよ!」

「これで懲りたなら、ちゃんと整理するんだな」

「うん。する!」


 というわけで、俺は息を吐くと外を眺める。

 夕日が差し掛かっている。どうやら、日が暮れるまで作業をしていたのだ。

 まあ、とりわけ作業が完了したのはよかったことだ。


「じゃあ、帰るぞ」

「……う、うん」


 俺は榛名に帰りを促すぞ、榛名はなんだか赤面を作り上げた。 

 一体どうしたのやら?


「どうした? 榛名?」

「あ、あの。ご褒美のキスしてほしいな」

「は、はあ?」

「だって、私。すごく頑張ったんだよ。だから、キスの一つくらいはほしいよ」


 と、わがままを思うがままに語る榛名だった。

 まあ、仕方がないな。このお嬢様のわがままを答えることにしよう。

 なので、俺は彼女の方に近づくと顔を近よせる。


「避けるなよ?」

「ん……」


 ちゅ、と唇と唇が触れ合う程度のキスをする。

 これ以上は大人になってからするのだ。

 俺たちは子供のようなキスをして終わったのだ。

 夕焼けが照らす生徒会室に背徳的な行動をしているなんて、他人に知られたら叱られるのだろう。

 まあ、俺はこのことを他言するつもりもない。もちろん、この関係も榛名が生徒会になっている限りは他言しないつもりだ。


「夕飯はハンバーグだけど。いいか?」

「うん! ハンバーグ大好き! ありがとう! 勝氏くん!」


 俺は夕飯の献立を伝えると榛名は元気よく反応した。

 全く、子供みたいだな。

 自分で夕飯を作れないのに俺が用意する夕飯はいつも楽しんで食べてくれるのは、嬉しいことだ。

 でも、榛名の家事力が壊滅的なのはこれから修正していけばいいか。

 と、俺は楽観的に事情を見ながら彼女が微笑む姿を眺めていた。


◇◇◇


 七月中旬は夏の真っ最中。

 部活たちはヒートアップし、特に3年生は最後の夏へ向かっていくために練習を猛特訓する。

 そして、その練習をもう特訓するのが裏目に出たのか、とあるトラブルが生まれる。

 今回呼ばれたのはサッカー部と野球部だ。

 トラブルの火元はグラウンドの占拠の件だ。

 サッカー部の部長の秀成の言う分は野球部が決まった日以外にグラウンドを占拠していることが問題だと言うのだ。

 しかし、野球部の部長の丸の言う分は野球部は甲子園の試合に近く、これからも練習を励んでいきたいとのこと。

 対立する二つの部がトラブルとなり、二つの部の部長は生徒会室に招集され対話で解決するようになったのだ。

 俺とはいえ、生徒会の庶務であり。彼らのトラブル元を耳を傾けるようにする。


「……話は聞きました。今回のけんはやはり、野球部の乱用ですね」

「しかし、我々は最後の夏がかかっている。練習を疎かにしたくはない。だから、グラウンドは俺たちに譲ってくれ! 頼む!」

「はあ? 何乱暴なことを言うだよ。俺たちだって、サッカーをやりたいだ。そりゃ野球部と比べると小さな部だけど、俺たちもサッカーの練習しているんだ。今年はインターハイに行ける可能性もあるんだ」


 丸のお願いに秀成は猛反対を繰り広げる。

 どっちもグラウンドを譲る気がないのが見え見えなんだ。

 でも、ルールはルールであり、今回は野球部の乱用にも見られる。

 俺だったら、野球部にペナルティーを与える、サッカー部に譲るべきだ。

 でも、そんなことをしたらうちの高校が甲子園で敗北した時、生徒会に責任を取らされる可能性もある。

 うちの野球部は強い。去年には甲子園に行き、一回戦まで勝利した部なのだ。

 ここで、足風を立てて、敗北につながることを避けたいのは確かだ。

 本当にややこしい問題だ。


「……わかりました。要は二つの部は練習をしたくて、このグラウンドを使用したいのですね」


 榛名は何かを閃いたように口を開く。

 一体、彼女は何を閃いたのか、俺は気になる。

 と、榛名は俺のほうへ顔を向けて、こう語る。


「悪いけど、勝氏くんにお願いがあります。体育館の使用状況はどうなっていますか? 調べられますか?」


 咄嗟の質問に俺は部活の情報を頭の引き出しから引き出す。

 

「確か、バレー部は月水の練習でしようされているはずだ」

「では、その残りの火木金は空いているのですね?」

「そのはずだ」


 俺はそう答えると、榛名は秀成へ顔を向けてこう訪ねる。


「サッカー部の部長さん。グラウンドではなく、体育館の使用はどうですか? 快適さはグラウンドまではいきませんが、練習日を増やすことは可能です。ここなら、」

「確かにそれはいいかもしれない。簡単な走りやキックのフォームを練習するなら、特に問題はないけど、悪くない提案だ」

「では、サッカー部に体育館の使用を承認します。これでは練習できますよね? もし、問題がありましたら何なりと生徒会に申し出してください。また対策を考えます」

「はい。ありがとうございます。生徒会長」


 こうして二つの部の問題は治ったのだ。

 野球部がグラウンドを占拠している日はサッカー部はグラウンドを使用することになる。快適さはグラウンドの方が遥かに上だが、月水以外で練習することができるのを比べたら練習できる場所がってもいいのだ。

 要はないよりマシな場所を提供されたのだ。

 俺は二つの部が握手するのを見守り、榛名の問題解決力に驚く。

 そうだ。俺の幼馴染榛名はポンコツではあるが、やる時にはやるのだ。


◇◇◇


「ふう。大変だったね。勝氏くん」

「そうだな。解決できない問題かと思ったぜ」

「ふふふ。私にかかれば解決できない問題はないのよ」


 魔法使いのように不思議な言葉を唱える榛名に俺はドキッとする。

 まさか、俺の幼馴染がこんなにすごい人間だったとはちょっと見直した。

 いつも俺の前ではポンコツを連鎖し、家事もできないし、俺の成分になっているようなものだ。

 でも、こうして課題解決できる頭脳は真似できないのだ。

 

「じゃあ、帰りましょうか」

「そうだな」


 俺たちは戸締りをしてから、外に出る。

 そしてここで榛名はポンコツさを披露するのだった。

 何もないところで、足を絡ませて転んだ。


「キャ!」

「あ……」


 今度は俺は離れているため、彼女を支えることはできなかった。

 榛名は見事に前に転倒して、スカートが捲れる。そして、彼女がお気に入りのくまさんパンツがあらわになっていく。


「イタタ……」

「大丈夫か?」


 俺は彼女に手を差し伸べる。

 でも、榛名は俺の手を取ろうとしない。慌ててスカート


「み、みた?」

「バッチリに」

「ううう!」


 榛名は赤面を作り上げて、涙目になる。

 そして、心の声を連発させる。


「大人にもなってクマさんパンツを履くのはみっともないよね?」

「そ、そんなことないじゃないかな?」

「もっと、勝負下着を履くべきかな?」

「なんで、勝負下着の話になるの?」

「だ、だって、好きな人に見せるパンツだよ。そこは気にするよ!」


 うええ、と泣き出す榛名だった。

 全く、何やっているんだか、俺は頭をポリポリと掻きむしってから彼女に手を差し伸べる。


「別にお前がなんの下着を履いても俺とお前の関係は変わることはないだろ?」

「……そうなの?」

「そうとも」


 俺はそれだけを言うと榛名は泣き止む。

 そして俺の差し伸べた手を掴んだ。


「……ありがとう。勝氏くん」

「お、おう」


 俺はそれだけを言うと彼女を引っ張り上げる。

 しかし、あまりにも強すぎた引っ張りに彼女は俺の胸に飛び込んできた。


「ちょ、ちょっと」

「へへへ。いいじゃん。こういうの」

「誰かに見られたら困るだろ?」

「困りませんよ〜」


 と、鼻を尖らせながら語る幼馴染だった。

 全く、この幼馴染ったらどうしたものか。

 俺は内心呆れるが、でも心のどこかで安心をする。

 変わらないこんな幼馴染が大好きだ。

 昔から変わらず、泣いてばかりの弱虫の幼馴染がいると心地よく感じる。

 変わらないことはいいことだと、俺は心のどこかで安心をしたのだ。


「今夜の夕飯は野菜炒めな」

「あ、それも好き! 最近体重が増えてきたの気になってたところだ」

「そうか。野菜多めに炒めてやる」

「うん。勝氏くん大好き!」


 こうして、僕たちは今日も変わらない日常を堪能する。

 これからも、ずっとこうした関係になっていくのだろう。

 

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