開闢《かいびゃく》
「チョ〜イ、チョ〜イ。」熊童子が羊を追うように白虎に近づき、白虎に飛び付こうとしている。
「お前、こんなどデカい虎に飛び付いても蹴られて終わりだそ!」茨木童子が功を焦る熊童子に飛び付くのを思い止まらせる。
すると後方から鬼達が大八車を引っ張ってきた。大八車の上には鬼の様々な武器が置いてあった。
「これだ!」茨木童子が縄鏢(じょうひょう)を引っ張り出すと、鬼達に配り始める。
「この縄を虎の頭目掛けて飛ばせ!全員の力を合わせて引き倒すのだ!」茨木童子が檄を飛ばすと、「おぉ〜!」鬼達は雄叫びを上げ縄鏢を回し始める。
白虎目掛けて次々に縄鏢を投げつける。白虎は縄鏢がまとわり付かないよう首をふる。その隙を見て鵺が前足を前に振り上げ爪を立てる。
それに応ずるように白虎も牙を向く。白虎が鵺と戦闘を始めると、また、縄鏢が白虎の首目掛けて飛んでくる。
一つの縄鏢が白虎を捉える。その縄を鬼が力の限り引っ張っていく。だが白虎はびくともしない。
さらに一つ、もう一つ、次々に縄鏢が白虎の首に届いていく。その度に鬼達は縄をしっかりと握り、力の限り引っ張っていく。徐々に白虎の自由が奪われていく。
その様子を朱顛童子が見ている。「あの大虎は難しいな。時間がかかる。」
朱顛童子がそう言うと「ここは、敵中突破だ!」朱顛童子が指示を出し、鵺と白虎の間を全速力で駆け抜ける。
白虎の足止めの為、鬼たちは縄鏢隊がまとわりつくことで動きを鈍らせる。
朱顛童子が先頭で茨木童子、鬼四天王の3匹が続けて爆走する。
縄鏢隊の鬼達をぶら下げながら白虎は鵺と対峙する。そして睨み合いながら、間合いを見て激突しようとしていた。
「ウォォ〜!」朱顛童子たちは鵺と白虎が激突する間際、全速力で駆け抜ける。
「ガガガー!」「ゴゴゴー!」白虎と鵺が再び激突する。白虎の首にぶら下がる鬼達をブルブルと首を振って吹き飛ばす。
白虎と鵺がお互い牙を剥き首を目掛けて噛みついていく。
「よし!取り返すぞ!」朱顛童子が鬼達に檄を飛ばし先を急ぐ。「ん?あれは星熊か?情けない。囲まれておるわ。」
朱顛童子は背中に背負っていた金砕棒を手に持ち星熊童子目掛けて投げ付けた。
朱顛童子達がスピードを上げる。すると前方から大挙、鬼達が逃げてきた。「朱顛様!」逃げてきた鬼達が朱顛童子に気付き一斉に立ち止まる。
「朱顛様が出張って頂いたら間違いない!あの平安武者どもを叩き潰しましょうぞ!」と、逃げて来た鬼達は一斉に朱顛童子の後ろに回った。
そして朱顛童子ら鬼四天王達を一斉に押し始める。「何だ!何だ?」押されるまま鬼達は先を進んだ。
見ると金砕棒が突き刺さっているすぐ傍で星熊童子が武者達に取り囲まれ大立ち回りを繰り広げていた。
星熊童子は取り囲まれないように必死で走り回り、激闘のあまり2本持っていた手斧は一本になっていた。
「朱顛様!お前達!」星熊童子が朱顛童子達に気付いた。
「何を手こずっている!この近くにあるのは間違いない!突撃せよ!」朱顛童子が星熊童子に申し渡す。
「へ?え〜いい!ままよ!」星熊童子がここまでの失態を挽回すべく鉄(クロガネ)が居る霧の渦に助走をつけてダイビングした。
しかし星熊童子は壁にぶつかったように弾き返された。
星熊童子が蛙のように仰向けになっていると霧の渦の中から武者が出てきた。
「あ!何だ貴様は!」気が付いた星熊童子が問う。
「お前達が探しているものは、もう居ない。始まるようだぞ。」坂上大宿禰が数人の武者を従え御所から出てきた。
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