「君の見ている世界を僕も見たかった」
学
僕がなりたかった君へ
大学生になった僕は「小説を読むのが好き」。僕は趣味を聞かれたときそう答えていた。別に好きでもないのに。ベットで横たわって、youtubeを見ているほうが何倍も幸せなのに僕は言わない。好きな飲み物はアイスコーヒーです。もちろん砂糖やミルクなんかいれない。でも本当はカルピスのほうが好き。でもそんなこと言わない。そんなこと言ってたら、いつまでも「そっち」には行けないから。
「僕の見えない世界を見ている君が好きだった。」趣味も、感性も、顔のつくりも似ても似つかない君に恋をした。君の見ている世界を僕も見てみたかった。でもいつだって偽物だった僕には見えない世界だった。
彼女は訳の分からないところでよく泣いた。偽物の僕には理解できなかったし、慰め方もわからなかった。でも僕は彼女の泣き顔が嫌いじゃなかった。むしろ好きだったのかもしれない。君の潤んだ目に映るもう一つの世界が僕にも見えるような気がしたから。
君は学校にあまり来なくなった。何かあったのかと話しかけても、何もないと言い張る。友達の前では笑顔を振りまく君。彼氏であった僕にもつらい姿を見せることも、弱音を吐くこともない。多分僕が、君の世界に入れないことも君は気づいていたのだろう。だから助けも求めなかった。そのころには、君が僕の世界に顔を見せることも少なくなっていた。違う世界を介して分かり合うことは無理だって僕自身も気づいていたけど。それでも僕は君が好きだった。
たった三か月。僕達は別れた。彼女は肩の荷が下りたかのように、学校にも来れるようになった。それでいい。それが正しかったんだと思う。
僕は大学生になった。あの頃の自分に出来たことは何だったのか、時折考える。でも僕はあの頃に戻ってやり直したいとは思わない。なんでかって、どうせ何も変わらないから。
今日もバイト終わり、喫茶店に向かう。吉野家をちらっと見て通り過ぎていく。そしてアイスコーヒーを注文する。860円。牛丼並なら二杯食べれるなと少し考える。小説を開いて読む。あぁ、君と同じことをしていれば僕がそっちに行ける日は来るのだろうか。そんなことを思いながら、僕は、スティックシュガーを三本手に取った。
「君の見ている世界を僕も見たかった」 学 @yoshinoyaichiban
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