第18話 バカはこの幼女が気に入らない
幼女と再会したニィヤン達はニィヤンを見つけて飛びだしたせいで遅れてやってきた侍女に話を聞いて欲しい事があると言われ、街中ではと言う事になり家で話を聞く事を提案し連れて行く。
幼女はニィヤンを見つけた事が余程嬉しかったのか歩いている最中ずっと服の裾を掴んで放さない。
ニィヤンはそれを微笑ましげに見ているがジュンは違ったようだ。
「あの幼女、兄(にい)やんを逃がさないつもりで掴まえてるんじゃ?」
「えっ? そ、そうなのかな? お兄さんに会えて嬉しいだけじゃ?」
幼女と侍女がニィヤンを挟むようにして歩く後方を歩くジュンは隣にいるジュラに耳打ちする。
何やらジュンのカン、女に対するカンというべきか前世から込みでヤバいと感じる女を相手にする事も多かったジュンのセンサーに引っ掛かるようだ。
だが、相手は幼女、ロリ婆という変化球でもなさそうだからそう感じる事がおかしいとジュンも分かっているようで首を傾げ気味だ。
ジュンは自分のカンを信じるべきか、それとも目の前の光景を自然に受け取るべきか頭を悩ましながらニィヤン達に着いて行った。
家に到着するとテーブルを囲んで落ち着かせるとニィヤンはお茶の用意をする為に席を離れる。
いつの間にかカ―さんも現れており、いるのが当然とばかりにニィヤンのお茶を待っている。
その間もジュンは幼女を疑わしげにジッと見つめているにも関わらず幼女はニコニコと笑みを崩さない。侍女の方が居心地悪そうにしてるぐらいだ。
やっぱりアヤシイとジュンは口をへの字にしている。
ジュンがムムムゥと唸っているとニィヤンがお盆でお茶を持って現れ、配膳して座る。
座るとニィヤンが開口一番を切る。
「あの時は街まで送れなくて悪かったな。自己紹介をしよう、俺はニィヤン、それと弟のジュンに幼馴染のジュラだ」
一緒にジュンとジュラの説明を告げ、ジュラは借りてきた猫のようにペコリと頭を下げるがジュンは半眼のまま見つめるままだ。
ジュンが珍しい反応をしている事に首を傾げるニィヤン。
ジュンはどちらかというと子供好きな方である事をニィヤンは知っている。だから好意的に反応すると思ったし、この幼女を相手にしないなら隣の侍女の子を口説きだすかと考えていたので予想外の反応である。
ジュンの行動に訝しげだったニィヤンに一生懸命アピールするカ―さんが自分を指差している事に気付く。
「ワシ、ワシの紹介は?」
「ああ、コイツはカ―さん。ごく潰しだから忘れてくれ」
酷いっと泣き真似するが誰も気にしない。かろうじてジュラと侍女の子がちょっと目を泳がせて困っているぐらいだ。
「じゃ、こちらの自己紹介じゃ。わらわはネアールでこちらのわらわ専属の侍女のラスティじゃ」
幼女、ネアールに紹介された侍女ラスティはペコリと頭を下げてくる。
ふむ、煙草をピクリとさせるニィヤン。
服装、喋り方そして専属の侍女を持つ存在から良い所のお嬢さんだとは思ってはいたがそれ以上かもしれない事に気付かされる。
そんなネアールがニィヤンを捜していた理由、そしてこの後にされる話は面倒事だと予想される。
機先を削ぐようにニィヤンが告げる。
「一応言っておくが前回言ったように礼などは不要だぞ? ついでだったと言える状況だったからな」
「うんむ、確かにそう聞いた。だが、やはり礼はしたい。体面の問題もあるが……」
「やっぱりそうか! 化けの皮が剥がれたな!」
ネアールが何やら続けようとしたが今まで黙っていたジュンがテーブルを叩いて立ち上がるといきり立つ。
すぐにニィヤンの下に行き、肩に手を置く。
「なんか街の入口で会った時から気に食わないと思ってたら兄やんを利用する気やな!」
「ち、ちが……違わなくはないか。確かに頼みたい事はあったのは本当じゃ。本当に会えて」
そう言うネアールがモジモジとしてニィヤンを見上げてくる。
「本当に嬉しかったのじゃ。だってニィヤンはわらわの理想のお兄ちゃん像そのものだったから」
その言葉にニィヤンは胸を打ち抜かれる。
キュンとさせられているニィヤンに気付いてないジュンはネアールにアホーと叫んでニィヤンに抱きつく。
「兄やんはワイだけの兄やんや! 例外はジュラだけや」
ぺっぺっと唾を吐く素振りを見せて勝ち誇った顔をするジュン。
そのジュンにグヌヌゥと悔しそうにするネアールをみて置き物化してる思われてたカ―さんが嘆息する。
「まあ、お嬢ちゃんの言ってる事をそのまま受け取るとして何かを頼む上でさっきの自己紹介は未完全じゃないかの?」
鬱陶しさが増し始めたジュンをどうしようかと考えていたニィヤンはカ―さんの言葉に少し驚き、ネアールとラスティを見るとバツ悪そうな表情をしていた。
どうやらカ―さんはこの2人の事を多少なりと知っているようだ。
「確かに言う通りじゃ。わらわの事後承諾させようとしてたのは不義理と言われて何も言い返せないのじゃ。しかし、それをバカとごく潰しに突っ込まれる形なのだけが納得は行かないのじゃ」
今度はカ―さんがテーブルをバンと叩き立ち上がるとジュンと反対側のニィヤンの肩を掴んでネアールを指差す。
「ワシもあの小娘嫌い! ニィヤン、頼みは断るべきじゃの」
「良く言った! ワイも賛成やで兄やん」
バカとごく潰しがタッグを組んでヤイヤイと言うのに挟まれたニィヤンは迷惑顔である。
とりあえず邪魔と両手で2人を押しやりつつ、煙草から登る紫煙を眺めつつ考えるニィヤンはネアールに向き合う為、視線を向ける。
「自己紹介の続きと頼みの内容を聞かせて貰えるか?」
「そうじゃな、わらわはジラーナ王国第7王女ネアール。わらわ達を匿って欲しいのじゃ」
想像していたより上流階級であった事に驚きとどうしてカ―さんが知っていたを納得出来たニィヤン。
紫煙を吐き出すニィヤンは、さて、どうしたものかと悩む。
やっぱり面倒事やったっと騒ぐジュンと断っておこうと胸を無駄に張るカ―さんの2人を黙らせるところから始めるニィヤンであった。
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