第31話 魔女の正体

僕と西岡は協力して

ベッドの上の郷田の死体の横に

平原の死体を並べた。

「あんた、見た目はアレだけど、

 随分と肝が据わってるんだな」

「これでも動揺してるんだけど・・」

西岡の言葉に僕は適当に返した。

それに関して言えば

全く同じことが彼にも当てはまるのだ。

西岡は平原が倒れた時に、

すぐに駆け寄っていた。

あんな場面に遭遇して

西岡のように咄嗟に行動できる人間が

どれほどいるだろう。

さらに西岡は瞬時に死因まで特定していた。

その知識はとても素人とは思えなかった。

彼のことを死神と名付けたが、

名探偵と改めた方がいいかもしれないと

密かに反省した。


「気付いたか?」

部屋を出ようとしたところで

不意に呼び止められた。

僕は振り向いて西岡を正面から見た。

長い前髪に覆われたその奥の生気のない目が

僕を見据えていた。

この表情。

そして目。

やはりこの男は死神だ。

「・・君は何か気付いたのかい?」

僕は逆に問い返した。

すると死神はベッドに横たわる魔女の死体を

指差した。

「この婆さん。

 男だぜ」

一瞬、西岡の言葉の意味がわからなかった。

「・・お、男?」

僕は首を傾げた。

「ああ。

 だから正確には

 『婆さん』じゃなくて

 『爺さん』になるけどな」

そう言うと西岡は平原のドレスの裾を

捲り上げた。

女性用の下着の中央部分が

不自然に盛り上がっているのが見えた。

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