第32話 秘密

「このことは他の奴らには秘密だぜ」

そう言って西岡は「くっくっく」と笑った。

「どうして・・?」

なぜ隠す必要があるのか。

僕はふたたび首を傾げた。

「この婆さんが爺さんだったとして。

 何か問題があるか?

 参加者の個人的な事情は

 ゲームには無関係だ。

 余計な情報は混乱を招くだけだろ?」

果たして本当にそう言えるのか。

僕は僅かに逡巡したものの、

最終的には首を縦に振った。

西岡が満足そうに頷いた。

「・・ところで、あんたは誰だと思う?」

「えっ?」

「犯人だよ、2人を殺した犯人」

「・・それは・・わからない」

そう答えつつ

僕は先ほど魔女が死んだ時の状況を考えた。

平原の隣に座っていたのは松平。

そして対面に座っていたのは西岡。

毒を仕込むなら位置的にこの2人が怪しい。

「君の考えはどうなんだい?」

僕はふたたび問い返した。

この賢い死神の頭の中が知りたかった。

「自分の考えは話さずに

 情報だけを得ようっていう作戦か。

 案外食えない男だな、あんた」

「い、いやそういうわけじゃ・・」

僕は慌てて否定した。

「ま、いいさ。

 いずれ犯人はボロを出すだろうから」

そして西岡はふたたび「くっくっく」と笑った。

「とりあえず。

 さっさと戻って飯を食おうぜ」

結局、西岡にははぐらかされたが、

死体を運んだ直後にもかかわらず

平然と食事をしようとしている

この男の図太さに

僕は僅かばかりの恐怖を覚えた。

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