第36話
「…まあいい。大体30点てとこだな」
「あぁ!?なんでだよ!」
「ルシアの能力がなけりゃ、今頃お前は悶絶してた」
「ただの負け惜しみじゃねーか」
「試してみるか?」
「上等!」
2人が言い合ってる中、ルシアはスタジアムを去ろうとしていた。
それに気づいたクラウスは、慌てて彼を呼び止める。
「おい!どこ行くんだよ!」
「用事があるんだ」
「用事ぃ?」
「ここの“用”は済んだだろ?あとは勝手にやってくれ」
クラウスからの「要望」は聞いた。
そう言わんばかりに、ルシアを手を振る。
ナツキは驚いていた。
まだ着いて10分も経ってない。
それなのにもう帰るの?
そう言いたげだった。
「ナツキ」
「え?」
「飛べる?」
「飛べる…けど」
「隣町まで頼む」
「隣町って、リーネ?」
「うん」
スタジアムから南西にある町、リーネ。
イスティア大学の敷地に面した谷間の中にあるこの町は、首都イスティアから離れた自治体地区の一つである。
イスティアからほど近い場所にある町であるという点と、イスティア大学の敷地に面した地区であるため、人口もそれなりに多く、町の住人の平均年齢も比較的若い傾向にある。
リーネにはガルバディア全土でも有名な三大鍛冶屋のひとつ、『ハンマー・ヘッド』が存在し、ルシアはそこに行きたいようだった。
彼はクラウスとは違い、「ソルジャー型」のブックメーカーだ。
元々使っていた短剣はバトルロードの初日で折れてしまい、使い物にならなくなっていた。
ハンマー・ヘッドに行けば自分に合った武器が見つかるだろうと思い、これからじっくり吟味しようと考えていたのだ。
ナツキは『ドラゴニア(竜人化)』のスキルを持つ「モンスター型」のブックメーカーである。
スキルによって自らの肉体を竜に変化させることができ、変化形態によっては、人を乗せて空を飛ぶことも可能だった。
スタジアムの外でスキルを発動し、背中にルシアを乗せる。
クラウスは訓練場に残るようだった。
あとで“うさぎ食堂”に合流するぞと、伝えて。
GROUND ZERO 〜特級スキル『パーフェクト・コピー』を持つ訓練生は、氷雪系最強の血筋、“フローレン家”の名を受け継ぐ暗殺家一家の御曹司〜 【第1巻】 平木明日香 @4963251
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