第34話



 「…おいおい。なんじゃこりゃあ」



 動画を見て驚いたのは、クラウスの右手が、確かに自分の顔を捉えていることだった。


 捉えていること自体に驚きはなかった。


 受けた感触的に、まず間違いなく「パンチ」だと思ったからだ。


 問題は、それが「どこ」から来ているか、だった。



 映像を確認すると、クラウスの右手は謎の異空間の中から飛び出してきていた。


 黒い靄のような円盤が、空間に穴を開けたように出現している。


 その「穴」は腕がちょうど入るくらいの大きさしかないが、奇妙なのは、それがクラウスの攻撃を呑み込むように現れていたことだ。


 穴は合計で2箇所、存在した。


 1つはクラウスと自分の中間、——つまり、元々攻撃が来るだろうと予測していた場所。


 もう1つは自分の顔面の横。


 ちょうど、“真横”あたりと言ったほうがいいだろう。


 その「2つ」が、同時に現れていた。


 クラウスの右腕は切断されていた。


 少なくとも、映像からはそう見えた。


 穴の中に吸い込まれるように右腕が消え、その“消えた部分が”、もう1つの穴の中から飛び出してきていた。


 2つの穴を隔てて、クラウスの腕が伸びているような状況だった。



 「…これは」



 思い当たる節があった。


 確か、クラス3の生徒の中に、『ゲート』という能力を使うヤツがいた。


 その生徒は空間に穴を開けることができ、その「穴=ゲート」を介して、自由に物体を移動させることができる。


 まさか、ルシアのやつ…

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