第33話
ジークハルトはハッとなった。
(…そういえば、今日は動いていないな)
その違和感の矛先にいたのは、スタート位置から動いていないルシアだ。
なんでアイツは動いていないんだ?
いつもなら、クラウスと一緒に向かってきてるはずなのに。
「大丈夫か?“先生”」
普段なら、そんな敬称は絶対に使わない。
大抵は“ゴリラ”とか“クソ先公”とか、そのような蔑称ばかりだ。
これ見よがしに煽りながら、クラウスは腕を組んでいた。
まるで、“今日は俺が見下ろす番だ”と言わんばかりに。
「一体何をしたんだ?」
「教えてやるかよ!」
「…まあいいさ。こういう時のために動画は撮ってあるしな」
スタジアムには多方向から映像を記録できる電子媒体が埋め込まれている。
「訓練場」としての利用が多い分、分析や自己解析を行うための確認用ツールとして設置されていた。
スタジアム内の「メディアステーション」という場所で、その映像を確認することができる。
ただし、ジークハルトには便利なアイテムがあった。
鳳凰院の各種施設のコンピュータにアクセスできる、教員用のパスコードを持っていたのだ。
これによって、彼は手元にある電子機器でも、遠隔で保存された「データ=動画」を閲覧することができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます