第29話



 ボディ。



 ジークハルトは、その一撃が加速していることに気づく。


 その「正体」が何かを、まだ追いきれない状況だった。


 タイプ1と2の併用。


 クラウスはこの日のために準備を重ねてきた。


 そしてその一撃がどのように転んでいくかを、ほとんど省みようとはしなかった。


 タイプ2に移行した時点で、彼の腹のうちは決まっていた。


 相手が動く「先」を捉える。


 言葉で言うのは簡単だが、それに至るまでのプロセスは、自らの足取りに懸かっていた。


 勝負を急ごうと言うのではない。


 決断した以上は、そのスピードがもっとも発揮される“内側”に行こうと思った。


 目では追えない距離、——思考が追いつけないほどの「間」へ。



 ジークハルトは迎撃の体勢を取る。


 避けるつもりだったが、思いの外クラウスのスピードが乗っていた。


 最初に想定した感覚とは異なる動き。


 その「動き」の本質がなんであれ、下手に避けようとするのは得策ではない。


 腹に力を入れる。


 クラウスの「焔武装」のヒントになったのは、ジークハルトの“身体操作”だ。


 焔武装と同様、エネルギーを体内へと自由に移動しながら、部分的な「肉体強化」を図る。


 避けるのではなく受ける。


 真正面から受け止めようとした。


 癪な話ではあったが、それだけ、クラウスの動きに意外性があった。

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