第28話



 ——シッ



 息を吐く音。


 クラウスは止まらない。


 攻撃を繰り出すモーションに「間」を持たせつつ、中間距離の点を探る。


 クラウスにとっての中間距離は、攻撃が届く範囲に違いはない。


 ただし、それがどの程度の「近さ」を持っているかは、連続する動作の繋ぎ目に“重ねて”いく必要があった。


 前と後ろ。


 平面と立体空間の繋ぎ合わさる場所。


 「動き」は作るものではない。


 相手との距離、——その呼吸の中に、自然と浮き上がってくるものだ。


 クラウスは狙い澄ましたかのように右腕を下げていた。


 点と点。


 一つのモーションへと繋がる動線。


 その通り道に、「足」を預ける。


 タイプ2で移動させたエネルギーを、地面の平面上に重ね合わせる。


 チャンスは早々訪れない。


 もしも捨て身の「一撃」を繰り出すなら、“タイプ2に移行した直後”しかないと思った。


 戦闘が長引けば長引くほど、互いの情報は多く流出してしまう。


 攻撃を仕掛けたクラウスにとって、相手の懐へと訪れる“機”は、決断する「一歩」の中にしかないと思った。


 生死を分ける境界は常に変化する。


 そしてその「時間」は、点と点を結ぶ直線上に常に“流転“している。


 しかし、一つの選択に於ける”決定力“は、決断するスピードによって大きな変遷を遂げる。


 連続する時間と空間の中にこそ「今」が訪れるが、同時に、その「タイミング」が失われるのは、今という位置の先端にしかないのだ。


 クラウスは、その「境目」にダイブしていた。


 思い切り蹴った動作の向こうに、”全てを預けて”いた。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る