第27話


 自らの影を踏む足。


 クラウスが何かしようとしていることは、それとなく察知できた。


 この前とはまるで違う動き。


 ただ単に突っ込んでくるだけではなく、モーションの中に“思考”が織り込まれている。


 それが単に繰り出された攻撃であるか、ある程度考え抜かれた攻撃であるかは、長年の経験によって見分けることができる。


 ジークハルトの頭の中では、クラウスの動きが手に取るようにわかった。


 それは実際の「動き」の位置や範囲が“正確に”予測できるというよりも、“相手が何をしたいのか”、それに際する有機的な予測であった。


 相手が機械ではなく生物である場合、それがいかに合理的な行動や選択であったとしても、「感情」が介在する余地は多分にある。


 思考が介在する時間が1%でもある以上は、その影響を無視して行動に移行することはできない。


 足を動かす時、腕を持ち上げる時、——あらゆる動作の中で、肉体と精神は連動する。


 その電気的な回路は、機械が行う動作とはまた違った奥行きと”情景”を持つ。


 ジークハルトは、クラウスが放つ空気感を視界の中に捉えていた。


 捉えつつ、攻撃の出所を探っていた。


 鋭く切り込んでくるステップ。


 ——その、中間に。

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