第21話


 クラウスは一歩後退する。


 止められた左手を引き、僅かに拳を緩める。


 額にこぼれる汗を拭いながら、スゥーと息を吸った。


 全身を脱力させ、胴体を少しだけ前に屈ませながら、体勢を整えた。



 「おいおい、人の話を聞け」


 「うるせぇ!」



 やみくもに突っ込むべきではない。


 そうでなくとも、慎重に行くべき相手だ。


 そんなことはわかっていた。


 ただ、「前」に出なければ戦局を変えることはできない。


 近距離を主戦場とするクラウスにとっては、「攻め」こそが重要なスペースになる。



 「焔武装・タイプ2」



 クラウスは両足に炎を灯す。


 焔武装は、肉体的な強化、——つまり、あらゆる運動機能を上昇させるための「バフ」だ。


 タイプ1は“時間変動型”。


 指定した部位にエネルギーを送り、より少ない時間効率で局所的な強化を行う。


 初手の一撃は、このタイプ1を利用した攻撃だった。


 部分的にエネルギーを消費することで、“一時的な”肉体強化を図ることができる。


 これをうまく活用することで、エネルギーの消費を最小限に留めることができる。


 指定した部位にエネルギーを送るためのリードタイムが若干必要になるが、範囲や可動域を応用することで、より立体的な奥行きを持たせることが可能だった。



 

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