第20話
足を前に出すようにして受け止めたまま、クラウスに苦言を呈した。
クラウスの「power」はクラス3でも申し分ないが、それをうまく活用するための“動作”が不十分であると感じていた。
攻撃は当たらなければ意味がない。
当然、実力差が開いている両者にとって、互いの間合いやスピードには雲泥の開きがある。
ジークハルトが指摘したのは、“実際の事象”というよりもそれに至るまでのプロセスだ。
攻撃が当たらなくとも、その確率を高めるための動きを継続する必要がある。
クラウスは直線的な攻撃をしてしまう傾向にあった。
戦術によってはそれが有効になり得るケースもあるが、動きが単調になりやすく、相手に攻撃を読まれやすくなる恐れがある。
戦闘を有利に進めるには、とくにそれがより広範囲の「対応力」へと精算する必要がある場合は、攻撃のペースやエネルギーの配分、スペースの確保など、いかに周りを俯瞰して見ることができるかに注視していなければならない。
戦場では、“一対一の局面”など限られている。
近接距離を主戦場とするならば、“空間の使い方”は最重要課題の一つだった。
その点について、ジークハルトは指摘していた。
「ただ攻撃をすりゃあいいってもんじゃねえぞ?」
「アァ!?」
グググッと拳が揺れている。
が、びくともしない。
サンダルの裏側で、突き出した左腕が止まっていた。
握りしめたままの拳を押し込もうと力を入れていた。
振りかぶったモーションから体重をうまく乗せた一撃だったが、巨大な大木が目の前にあるかのような感触が、拳をぶつけると同時に現れていた。
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