第14話



 「おらよ!」



 ダッシュで距離を詰める。


 走りながら、右手に「火」を灯す。


 クラウスは火のブックメーカー。


 ブックメーカーと呼ばれる者たちにはそれぞれ「属性」が存在しており、属性に応じた魔力や能力を扱うことができる。


 属性は全部で四つある。



 炎熱系=赤属性


 氷雪系=青属性


 雷電系=黄属性


 疾風系=緑属性



 クラウスは“炎熱系統”の能力者だ。


 火の魔力を扱うことができ、攻撃に特化した性能を持つ。


 炎熱系だからといって、「攻撃性能」に優れているとは限らない。


 防御に特化したものもいれば、サポート能力に特化しているものもいる。


 扱える魔法の種類も様々だ。


 そもそも「魔法」というのは魔力を具現化する上での“通り道”でしかなく、これといって決められた「型」みたいなものは存在しない。


 扱う者によって、魔法自体の性質や特徴は大きく異なる。


 決まっているのは、“マジックゲージ”と呼ばれる一種のパラメータだ。


 これは、イメージとしては機械に使用する電力のようなものであり、単位時間に魔力がする仕事(量)のことを指す。


 ゲージとはすなわち「容量」のことを指し、一度に使用できるエネルギーの幅や、エネルギーの出力に関係する“魔力効率”を算出するのに必要な「指標」となる。




 ダンッ



 勢いのあまり、芝生がめくれ上がった。


 距離にして数十メートル。


 脇目も振らず、クラウスは一気に加速した。


 彼は「ファイター型」のブックメーカーだ。


 近接距離での戦闘が得意であり、肉弾戦を好む。


 ”一歩“に必要な出力を上げる。


 見るからに隙だらけだった。


 ジークハルトは両手を組んだまま、微動だにしていない。



 いける!



 左右に動きながら撹乱する。


 移動する「幅」を広げつつ、空間をフルに活用する。


 ただ移動するだけではない。


 1つ1つのステップに緩急をつける。


 場所が“平面”である分、比較的移動はしやすい。


 攻撃の出所を読ませない。


 ジグザグに動きながら、ジークハルトの目線を動かそうとした。



 バッ



 数メートル手前で一度急ブレーキし、地面を掴む。


 膝を曲げ、右足は宙に浮かせたままだ。


 前傾にしゃがんだ姿勢。


 魔力を一点に集中する。


 “下半身”


 踏み込んだ左足の、——膝下。

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