第13話



 「さっさと始めるぞ」



 ジークハルトの声に促され、2人は位置についた。


 この3人で行う訓練は、去年の春頃から始めていた。


 ちょうど、クラウスが鳳凰院に入学して一年が経った頃だ。


 その頃はクラウスもルシアも「クラス4」の学級だった。


 去年の冬にあった昇給試験に合格し、現在はクラス3に配属することとなったが、2人が入学してわずか一年で昇級できたのは、このジークハルトの「訓練」があったおかげと言われている。


 クラウスはもちろん、ルシアもそれを認めようとはしない。


 ただ、周囲の者たちからすれば、2人の成長は著しいものがあった。


 本来、鳳凰院に通う学生のほとんどは、『クラス1』を除いて、グレード「K」にすら分類されない。


 クラウスもルシアもまだまだグレードの”付与”には程遠い存在だったが、各部門の数値に於いて大きな変動があった。


 クラウスは「power」、ルシアは「ability」のカテゴリーに於いて。



 「前に出るから、フォローしろ」


 「なんで俺がお前のフォローを…?」


 「お前の能力は役に立つからな。一泡吹かしてやろうぜ」


 「…ったく」



 ガッハッハという笑い声がスタジアムに響く。


 ジークハルトはかなり豪快な性格の持ち主であり、周囲を驚かせるほど、自由奔放な一面を持っていた。



 「青臭いガキどもが、誰を一泡吹かせるだって?」


 「テメーをだよ!」



 合図を待たないまま、クラウスは飛び出した。


 ハラワタが煮えくり返っていた。


 毎度毎度恥をかかされている。


 特に前回は、頭突き1発でやられるとは思いもしなかった。


 実力差が開いていることは分かっていたが、だからといって、みすみす黙っているわけにもいかなかった。

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