第5話


「いやー、さっきのはマジで笑ったわ」

「駿にプレゼント渡したらこんなことになるのぐらい想像できなかったのかな」

「てか、駿もやるねー」




 教室内はまだ湊の話題で持ちきりだった。駿はまだ、教卓上のプレゼントを見つめたまま、突っ立っている。が、やがてその欠片たちを集め始めた。話に夢中のクラスメートは誰も気づかない。




 そう思われたが、後方にいた1人の男子が、彼の作業を見て駆け寄る。




「おい、駿」

「なんだよ」




 駿は彼に目を向けずに返事をした。黙々と作業を行う彼に、男子は躊躇いがちに尋ねる。




「本当に、良かったのか?」

「何がだよ」

「湊のことに決まってるだろ」




 湊。その名前を出した瞬間、僅かに駿の手が止まる。心配が杞憂ではないと知った男子は、駿に問い詰めた。




「お前だって、湊のこと好きなんだろ?わざわざこんな事しなくても……」

「仕方ないだろ」




 駿は冷たく言い放った。集め終わったプレゼントがくしゃりと縮む。背中から感じ取れる悔しさとやらせなさに、男子は掛ける言葉を見失う。向こう側を向いたまま、駿は捲し立てた。




「俺だって、湊の好意を素直に受け取りたいよ。けど、無理じゃないか!そんなことしたら、あいつが苦しむ……。最悪、あいつは居なくなることになる」

「それは……そう、だけど。なんとかなるんじゃ……」

「なるわけない」



 駿は男子の方にようやく顔を向けた。奥歯を噛み締めているその表情は、全ての感情を受け入れつつ、しかし我慢できずに漏れている。そんなものだった。




「俺らはまだ子供だ。無力な高校生なんだよ。それが、感情を理由に世の中のルールを破れるわけがない」

「……そうだな。ごめん、余計なこと言った」




 駿の圧に、言うべきではなかったと悟った男子は謝罪を述べる。だが、駿もハッとして、髪の毛をぐしゃぐしゃと掻きながら「悪い」と謝った。そして、プレゼントだったものを自分のカバンに入れながら、力無く笑う。




「本当は、俺だって湊は好きなんだ。すごく、好きなんだよ。けど、どうしたって俺たちの恋愛は許されないだろ?だってあいつはーー」


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