”幸せ”という形のないモノ
リュウ
第1話 ”幸せ”という形のないモノ
朝起きて、スマホを見る。
メールが無ければ、ニュースを確認したりする。
今日も会社かと、金縛りにあったように動けない身体を無理やり動かしベッドを抜け出す。
トイレに行って、余計な力が入った下半身を開放してやる。
リビングに行き、少し重めな遮光カーテンを開ける。
天気はいいらしい。
雨なら、会社に行く気が失せてしまう。
ソファに腰を掛け、テレビのスイッチを入れる。
ニュースが流れる。
何があっても、どうにもならないが、取りあえず、ニュースをチエックする。
チャンネンルをカチカチと切り替える。
チャンネルを変えるのは、世の中の女性は嫌いらしい。
けど、ここには女性が居ないので関係ない。
何も無いようだ。
例え何が起こっていたとしても、画面の向こう側の事で現実味が無い。
この建物が火事でテレビで現場中継が行われ、テレビに映らない限り、自分に危険が迫っているとは思わないだろう。
自分には、関係ないことだ。
僕は、冷蔵庫からオレンジジュースをグラスに注ぐ。
昨夜、コンビニで買っておいたパンを咥えてソファに戻る。
そして、ニュースを見る。
「バカじゃねぇ」間抜けなニュースを見ながら独り呟く。
これも世の中の女性は嫌いらしい。
僕って、嫌われることばかりしてる。
総務の女子の不快な顔が浮かぶ。
「休もうかなぁ」グラスを開け、テーブルに置いた。
会社を休むことで、色々な面倒くさいことが頭に浮かんできた。
結局、行くことにした。
こうしないといけないと、洗脳されている。
「だれに洗脳されているの?」
「だれかにさ」
天気予報が昼から雨だと告げていた。
顔を洗って、着替えて部屋から出る。
地下鉄駅まで向かう。
舗装された道を真っ直ぐ進む。
決まった高さの縁石で、車道と歩道が分けれれている。
今、私は歩いているので、車道より二十センチ程高い歩道を歩く。
歩道を歩いていても、歩行者同士がぶつからない様にどちらかに寄っている。
車道の反対側は、建物なので、入ってはいけないと塀が設けられている。
歩道には、凸凹の黄色い点字ブロックが真っ直ぐ張られている。
交差点では、信号が進んでいいか止まるかを知らせてくれる。
渡る所は、横断歩道のペイントがされている。
地下鉄の入り口を降りる。
歩道と同等に、点字ブロックが張られている。
手すりや踏み外し防止の黄色いテープが張られている。
非常口のピクトグラフが点灯している。
銀行のデジタルサイネージが、ローンをしなさいと促している。
点字ブロックは、券売機や改札へと伸びている。
僕は、改札を通る。
”ピッ”という電子音。
電車を待つ。
電車の入り口は、点字ブロックや線で床に描かれ、何列に並ぶかまでも示している。
誰が決めているのだろう。
生活しやすいように、決められている。
その指示通りに人々は並び、歩いていく。
自分が生きるためのお金と言うモノを手にするために。
働く、働き続ける。
自分のため?
他のモノの利益のため?
誰が決めたの?
長い歴史の中で、決められたらしい。
形のないモノを多くを手にするために。
手にする方法は、交換すること。
交換することを誰が教えたのだろう。
形のないモノと自分の生きている時間を交換する。
形のないモノと自分の身体さえ交換する人もいる。
これは、生きていることなのだろうか?
俺たちは、誘導されている。
誰かの為に、時間を取られている。
”幸せ”という形のないモノを信じらせられて。
僕らは、長い間かけて、洗脳され、絶えず誘導されている。
「おはようございます」僕は、会社のドアを開けた。
”幸せ”という形のないモノ リュウ @ryu_labo
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