第35話

 冷たい空の空気が、私の傍を高速で通り過ぎる。

 急速にに地面が迫ってくる。


 高空から、一気に地上の訓練場へ。

 そこに立つ一人の人物――、スキンヘッドに外套を身に着けた長身へ目掛け、私は滑空する。


 あと、1秒もせずに到達する。

 その直前。


 私は、長さ2メートルはあろうという槍を振りかぶった。

 『突き』では無いのはせめてもの情け。

 そのまま強襲はせず、その人物の背後――。

 その地上で一度地面を蹴って、ワンクッション置く。


 そして跳び掛かった。


 私の魔術で完全に消した気配での襲撃。

 目的はそこ一点だ。


 私はギルダーの身体に向けて。

 槍を、ぶん回す。


「――な……ッ!!?」


 直後の驚きは、ギルダーと私。

 二人同時だった。


 これはまずい。

 そう思った私は追撃することなく、咄嗟に飛び退いた。

 便利な分、効果時間の短い私の魔術が解除され。

 姿が露になるのと。


 ギルダーが振り向いたのは同じタイミング。

「驚いたな、全く気配が無いとは。それに、これほどの魔術――」



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