第33話

 空から、目当ての特徴の人物を探る。


 視力を強化している今の私ならば、倍率を調整することで地上を歩く人物の毛穴までくらいなら見ることが可能だ。


 さらに、追加の簡易術式をオンにすることで、壁1枚程度ならば透視もできる――はずなのだが。

 

「さすがに壁は無理か」


 ニルヴァーナ魔法学校は名門と言うだけあって、校舎の壁面に魔術防御が成されていて透視は難しそうだ。


 つまり、外に出ている人物や、廊下を歩く人物を窓越しに観察することになる。


 探す人物はスキンヘッドに色眼鏡だという。

 生徒でないなら服装も、制服とは違う筈だ。

 きっと、雑に見回してもすぐに見つかるだろう。

 衛兵の詰所でも、学園内に居ると言っていた。 

 

 つまり絶対にどこかに居る筈だ。


 私は目を凝らす。


「……どこかな……?」


「さすがに、こんな空からじゃ一緒に探してあげられないわね」

 肩に乗る人形エメスの声が言う。


 学園内に潜入して捜査しても良かったんだけどね

 折角、魔術のリソースが充実しているこの領域を活かさない手は無い。

 そう思って『空』を選んだのだ。


 しかし。

「大丈夫……今見つけましたから」

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