第32話

 ――飛行の魔術。

 私は、羽ばたく鳥のように、一直線に空へと舞い上がる。

 まずは高所から、強化した視力でギルダーを探そうという目論見だ。


「飛んだ……!?」

「飛行魔術ですか? 補助具も無しに?」

 エメスと、スールアの驚きの声が上がる。

 

「……ここは、風属性も重属性も豊富なようですからね」


 飛行は、高レベルの複合属性魔術であり、多くの現象核オリジン魔素マナ魔気オドを持続的に消耗する。

 しかし、学園内はそれが豊富だ。

 空からギルダーを探す間くらいなら、私の魔気オドもそんなに消耗しないだろう。


 さて。 


「ギルダーってどんな方です?」


「高身長で筋肉質な男性です。スキンヘッドに、色眼鏡をかけていることが、多いですね、――あと、居るとしたら、兵科の校舎側だと思います」

 

 空高くに佇む私の耳元でスールアの声がして。

 探し人の見た目と。

 居場所の心当たり、を説明してくれる。

 

「ありがとう。兵科の校舎は、北側の奥かな?」

 遥か直下の地上。

 古臭い建物が並ぶ一角に、案山子のようなモノが並んでいる場所がある。

 剣の修練をしている生徒が、目に入ったので、そこかと思ったが。


「そうです。その練習場のすぐ傍が兵科校舎です」


「了解した」

 ではその周辺に居る人物に注目して、探してみるとしよう。



 

 

 

 

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