第31話



 改めて私は、周囲を見る。


 女神像もそうだが。

 歴史ある学校のため、校内のいたるところにひび割れや傷が多くみられる。

 よく言えば、年季を醸し出していると言えるが、悪く言うなら古臭くて、ボロい。

 だがしかし、合間から雑草を生やす石畳も、奥に聳える煉瓦の校舎も。

 あらゆるものが古代遺跡のような、浪漫、というべき趣を孕んでいる。

 

 そんな景観の中を、往来する生徒の影がちらほら見える。

 とんがり帽子をかぶり、ローブを翻し、魔導書や杖を持って歩く魔術師の卵たちは、ここの雰囲気に溶け込むかのように、とても様になっている。

 

 そんな学園の敷地は広大だ。

 以前私が教えた生徒の屋敷も広大だったが、敷地面積で言うなら良い勝負くらいだろう。

 そして。

 この領域は、魔素マナとあらゆる現象核オリジンが比較的濃い。


 故に。


 私は、その地の利を得て、唱える。


「『飛行フライト』」



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