第29話

「……こちらで連絡してみましょうか?」

 詰所には、通信設備でも置いてあるのだろうか。

 通信用の魔道具は開発が滞っているはずだが……。


「できるのですか?」



「ええ……簡単な通信魔術でしたら、使えますので」

 なるほど、受付嬢も魔術師だったらしい。

 むしろ、かなり若い見た目の受付嬢さんだが、もしや学生のアルバイトだったりするのだろうか?


「ああ、でも結構です。うちの受講生にこの人形を届けるついでがありますから」


 私は、完全に人形のフリをして、くてん、となっているエメスを示す。

 これで、この人形も怪しまれたりはしないと思うのだが。


「――解りました。ではこちらに記入をお願いします」


 そうして、私はカウンターの紙に必要事項を記入する。 


「とんがり帽子は不要で構いませんね?」


「ええ、大丈夫です」

 とんがり帽子は、学園の生徒が実習などでも身に着ける防具の一種だ。

 高い魔力吸収力を誇る魔道具でもあり、魔術的な事故に対して非常に堅牢な性能を持っている。

 恐らく貸し出しも行っているのだろう。


 だが、私が被っている二股のピエロのような魔術帽子はそれ以上の一品なので、不要なのだ。


 そして、入場許可証を受け取って、私は学園内に潜入を果たした。


 さて、ギルダーはどこかな。

 

 

 

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