第24話

 そんな端正に作られた球体関節を持つ人形――。

 エメスは、美しいと可愛らしいの丁度中間のような顔をしていて。

 そこに長く伸びる前髪のサイドも、ツインテールも、巻き気味のクセがあり、その髪色は、紫と緑の不思議なグラデーションをしていた。

 

 そして、背中には骨組みで出来たような折りたたまれた翼まである。

 もしかしたら飛行能力もあるのかもしれない。


 さらに、やや艶めかしいボディラインを持つ素体は、ミニスカートの可愛らしいドレスを着せられており、靴も手袋も身に着けていた。


 この一点の妥協もない衣装も、手作りだろうか。

 

 ――エメスは、とても愛に溢れた創造物だった。

 各部複雑に設定し設置された呪文コード魔法陣プログラムの数々まで解析することは私でもすぐには無理だが。

 こんな真似は早々できないだろう。長年の研究が必要だ。

 スールアの人生が籠められていると言っても良いかもしれない。

 

 ただ、ひとつだけ解析できたわかることがある。


「……念のため尋ねますが、稼働時間はどれくらいですか?」


 その質問に、スールアは少し驚いたような表情で。

 エメスには、「あら怖い、先生」

 と呟かれてしまった。

 

「そこは重点的に研究しましたから、およそ7日は持続出来ます。激しく動かなければですが……」  


 つまりスールアが充填した魔気オドが枯渇するまでの時間だ。


「解りました。では、無駄遣いしないよう私に捕まっていてください、エメスさん」


「オッケー、よろしく、先生」


 そうして改めて私は、エメスを肩に乗せ、行くべき場所へ赴くのだった。

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