商談

第10話

 夜。

 私はまだ、森の中にいて。

 狐耳の獣人二人の話を聞いていた。


 ちなみに。

 私も、シエナも既に武器を解除し。

 スールアは、地面に置いたゴーレムの掌を椅子代わりにしている。


 話を聞けば。 

 二人は、ゴーレムの巨体でも迷惑にならず、人目にもつかないだろう、――という考えで森の奥地で、特訓をしていたらしい。


 そして……。


 特訓をしていた理由。


 つまり、目標としている試験の内容だが。


 教師が試験官として雇った、ギルダーという名の傭兵に実力を認めさせる、というもののようだ。

 しかも、白兵戦闘の試験であるため、ギルダーと一定以上の距離離れてしまったらその時点で失格だという。


 魔術師に接近戦を要求するなんて、やはり兵科は正気じゃない。

 それでも、受講するという生徒がいて、前衛としてフロントラインで仕事をしたいという者たちが居るのだから、詮無き事だろう。


 しかし金色キツネ娘シエナが、魔法兵科の中でも武器を使ったスタイルなので、このような試験内容らしく。

 ゴーレム使いの銀色キツネ娘スールアは、別の内容の試験で既に合格しているそうだ。


 私は、聞いた話を整理しつつ、考える最中、ふと気づいた。 

 この話には気になる部分がある。

 

「さっき、私の事を『ギルダーの差し金か』と言っていませんでしたか?」

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