第9話



 確かに二人は手練れだった。

 合成も、魔法陣の呪文コーディングも、そつなく上手い。


 けれど、それはやはり学生という中での話だった。

 


 



 実のところ。 


 私は拍子抜けだった。



 蓋を開けてみれば、そもそもの魔術の練度が段違いであることから、白兵戦になるまでも無かったのだ――。


「――ッ!?」


 シエナが驚き、悲鳴のようなモノをあげる。

 同時に。

 ハルバードの穂先が、明後日の方に吹き飛び、くるくると宙を舞って地面に突き立った。

 そのまま残滓となって消えていく。


 シエナの手に残ったのは、柄だけだ。


 私の振るった大剣が、同じごん属性魔術――ミスリルで作られているハルバードを一刀の元に切断したからだ。


 これは、武器の性能の差。

 魔術で作ったモノである以上、魔術の力量の差によるものだ。


 そして。

 続いて、突き出され、迫りくるゴーレムの拳を、跳んで躱すと同時に、水車の如く回転し、斬撃を置いて回る。


 私が着地するのと、バラバラに斬り刻まれたゴーレムの腕が音を立てて崩れ落ちるのは同時だった。


 

「一撃で……! ――これは威力というより、精度の差……?」

 

 一瞬で悟ったのだろう。

 スールアの言葉にも諦めが混じる。


 魔術で作られているのなら、ゴーレムとて同じ。

 籠められた術式の精度や魔力の密度。

 様々な要因を加味しても。

 

 私の大剣を弾き返すクオリティでは無かったということだ。


 そもそも。

 作り出した武器の材質、圧縮されている武具の製造工程が違い過ぎた。


「――神器オリハルコンは、少しやりすぎでしたね」


 特に材質の差は大きかった。

 ミスリルでは、防ぎきることは困難だろう。


「材質を落としましょうか……? 魔銀ミスリル、もしくは、鋼鐵スティールあたりにでも……?」



いい……太刀筋を見れば、あんたが武器の扱いにもたけているのは解る」


「……負けでいいですよ。勝てる気がしないので」


 結果的に。

 勝敗が決するのに、1分もかからなかった。


 

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