第8話




「――特訓よ、ただの」


 特訓?


「今度、シエナは学園の兵科で、白兵戦闘の実力査定があるんです」


 なるほど、学園の生徒なのか。

 しかも純粋な術師の普通科ではなく、この娘たちは魔法兵科を専攻している生徒だったらしい。

 つまり、将来軍人や傭兵になることを目指している術師なわけだ。


「それで、魔法戦技マギアを使っていたのですか」


 マギアとは魔力子マギトロン武芸アーツをくっつけた造語だ。

 他には魔奥義、剣の場合には魔法剣などともいう。


 

「まぁね……。でもさすがに、こっちの授業は出来ないんじゃない?」


 こっち、とは、兵科のことでしょうか?

 確かに、私の格好は二股の魔術帽子に、ケープ付きのローブ、ブラウス等、全身黒で統一され、古典的な魔術師スタイル。

 見た目だけなら、接近戦などできないモヤシにしか見えないかもしれない。

 それに技術的にも、真っ向勝負というのはいささか面倒ですし、私自身、術のほうがどちらかと言えば専門ではありますが。


 仮にも私は、かつて、魔物を殺すのを仕事にしていましたからね。


 ――多少の白兵戦の心得はありますよ。

 仮にも学生に負けるようでは、逆に沽券にかかわるというもの。


 その挑発、受けて立ちます。


「――試してみますか?」


 私は紡ぐ――!


つちに煌めき、締結ていけつみずを暴く――集え、うつつまぼろし示現じげんの刃――『金剛大剣ツヴァイハンダー神器オリハルコン』」

 


 私は、『大剣』を作り出し。


 そして思い付きを、大剣の先端ごと突きつける


「私と勝負してみませんか。――もしも私が白兵戦で勝てたなら……雇っていただけます? 兵科の特別授業が御所望なのでしょう?」


「ふん! ――どうみても生粋の術師もやしが! 言うじゃない!? ……なめないでよ!」


 ハルバードを構える金色狐娘シエナに、不敵に返そう。


「それはこっちのセリフです。……あと、雇ってくれるんですか?」


「……じゃあ、私たち二人、倒せたらですね。シエナ一人じゃとても授業料を払えないでしょうから」


 さらに銀色狐娘スールアの声と共に。

 ゴーレムは左右両方の拳を、ガツンと打ち鳴らす。

 まるで自身を鼓舞するかのようなそのパフォーマンス。


 ハルバードに雷の魔力を纏わせるシエナと合わせ。

 

 獣人二人は、既に臨戦態勢だ。



 二人同時に、ですか――。


「良いでしょう。――商談成立ですね」


 いざ、就活のために! 望むところです!







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