第3話



 私がその巨体の全容に、驚いた。

 その時。


「黒竜派・壱式――『神成爪禾しんじょうそうか』!!」


 雷鳴と共に、二日月ふつかづきを象る斬光が、三重の軌跡を描いて迫り来る。

 

 咄嗟に、私は動いた。 


「――逸らせ、空蝉うつせみ嗜虐しぎゃく――『弾道歪曲壁バリスティック・コンフュ』!!」



 重属性の魔術式で軌道を逸らす。

 

 術式の強度と即応性を両立させるために、なんとか固有節と名称節による術式宣言を間に合わせた。


 それで、まるで爪を思わせる三つの斬撃は、狙いを逸らされて地面に穿たれた。

 ずどん、と物理的な威力で土砂が舞い上がり。

 迸る雷の威力が衝撃となって周囲を震わせる。


 しかしながら、そのすべての余波をも。

 私の魔術は何一つ寄せ付けなかった。



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