第2話土下寝と交際

土下寝……それは範馬刃牙という作品(現在連載中)に使われた土下座の最高級の謝罪の仕方である。

形は寝ていると思われる体制で、ふざけてんだろと思われるだろう。

だが、皆に考えて欲しい。

いつも我々が見てる土下座……あれは本当に申し訳ないと本当に反省しているという謝意なのだ。

そして、土下座で必要なのは頭である。

あれではまだが高いのだ。

ならどうするか……そう、完全に、体を頭を地面にくっつける事により、最高級の謝意になるのだ。

ま、まぁそこはいいとしてだ。

いいとして……俺はひとつだけ許せん事がある。

この漫画、知ってる人は知っているだろうがバチボコに殴り合いのバトルマンガなのだ。

たまぁに感動はあるが……女子がキャッキャッするものはあんまりない。

むしろキャー!!っと叫ぶ量の切断や殴り、大量の血が出てくる。

そうここまで言えば分かるだろう。

こんな可憐な女の子がそんなバトルものを見てる訳ない!

どこで知ったのか知らんが……自称漫画やアニメ、ゲームに音楽をこよなく愛する俺にとって……これは侮辱に値する。

顔が良く、ムードメーカー(彼女の事は全く知らないが)ぽく、クラスの中心的人物(あえてもう一度、私は彼女を知らないが)が俺なんかをはめる為にアニメの1シーンを使いやがって。

だが、俺だって一人の人間……心の狭い男じゃない。

1度ふかーい呼吸をすると、未だなお土下座をしていた彼女の方をむく。


「え、えっとね……まず顔を上げてくれるかな?」

「嫌です!先輩がいいよって言うまでこの体制でお願いしまくります!」

「即答からのお願いだと?!」


なんて素早い返答……俺でなきゃ聞き逃していたね。

ってハンターハンターの最強モブの真似をしてる場合じゃない。

というか……そこまでして俺を貶めたいか。

俺の噂が一年まで伝わっているとはな……人が放つ言葉とは残酷だな。


「先輩……答えは」

「……俺の答えは」


もう俺の答えは決まっている。

その事を伝える準備を整える為、体をほぐす為の準備運動とし、こういう時の為のルーティーンとして制服の裏ポケットからイヤホンを取り出す。

それを両耳に着けると、スマホで走る時の聴くようにしている数年前のドラマmiu404で使われていた曲をかける。

いつ聞いても……心からワクワクが込み上げてくる感覚……。

伝えるのはシンプル……恋人を作る気はなく、嘘コクはやめるようにうながす言葉。

こんな可愛い子にこんな所業させる訳にはいけない。

その時全然返答が返ってこなくて気になった後輩が土下寝を直そうとした次の瞬間。


「すまないが俺は恋人を作る気はないが、一つ……嘘コクで人の心を傷つけるのはやめなさい……それではさらば!」


そう伝えると、相手の言葉を聞かずに踵を返し、奇行種並のスピードでその場を後にした。

しかし校舎に入ってすぐに肺が締まり、息をするのも辛くなってしまいむせていた。

元々体力がないのに走るんじゃ……ないな。

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