第8話

本当は母さんも、働いて誠司の笑顔を見たかった。でも、やっぱり仕方ないよね。母さんが死んでも元気に育ってね。母さんが遠くへ行っても、誠司が笑っていますように)


 この世には金なんてない。

 俺は涙を流して誠司を力一杯殴った。

母親は息子の罪を代わりに被ってくれたのだ。

 床に倒れていても、まだ狂ったように笑っている誠司に兄は手紙を読ませようとし、 旦那さんは警察に連絡できないことだと悟って硬直していた。


「読むんだ!読めー!」


 兄の悲痛な叫びは最後まで誠司の耳に入らなかった。


 翌朝。新聞には母親が犯人になっていた。

 指紋なども、兄と俺が細工した。

 36万円も二人に返して、そして、運良く公園の防犯カメラはメンテナンス中だった。

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酷い月 主道 学 @etoo

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