第6話
或いはスキャンダルを怖れる有名人な不倫相手の誰かだろうか?
怨恨もあるな。
俺はスマホで家を撮ると、住所を覚えて家路についた。
自宅のソファに座ると、早速スマホに映る画像を見た。
俺があの公園に着いたのは、深夜の十二時。その間。誰も公園内には入っていない。
依頼主の血はつい最近のものだ。
当然、警察には何も言わない。
今の生活だけでは、年を越えられない。
警察より先に犯人に接触して、金を脅し取りたい。まあ、後で逃がすのだが。
犯行時間は十一時から一時頃まで。
依頼主は不安がっていた。早めに来た可能性もある。
凶器はスマホで見たところ、ナイフなどの刃物。恐らく背後から音も無く心臓辺りを突き刺し、それから少しばかり何度か刺している。
財布か何かを奪って逃走したのかは分からない。
或いは怨恨絡みや有名人の不倫相手なら財布はあるはずだ。あまり調べられないので、分からない。
いずれにしても、依頼主は俺が前払いだと言ったので、大金を所持していた。
犯人は一人だ。
俺はナイフを護身用に上着に隠すと外へと出た。
公園の死体は朝には見つかるだろう。
その前に犯人から金を脅し取って、さっさと逃がそう。
明かりが点いていた家に着いた頃には、明かりがなく寝静まっていた。
俺はチャイムを鳴らす。
チャイムの音は外へは漏れなかった。
赤い月の凍えそうな静まり返った夜には、お似合いだ。
家に明かりが点いたが、玄関からすぐにでてきたのは以外な人物だった。
何かに怯え、震える専業主婦だった。
怨恨の線なのだろう。
俺は無言でスマホの画像を見せると、同時にナイフを見せた。
主婦は真っ青になって俺を穴のあくほど見つめていた。
「金が欲しい。約束する。誰にも言わない。逃がしてやる」
俺はそれだけ簡潔に言う。
主婦は慌てて家の中へ戻り、しばらくして分厚い封筒を俺に渡した。
「お願いします。もうしませんから私を逃がして下さい。本当に約束を守って下さい。どうか、私を遠くへ……」
「いいぜ、俺は金が欲しいだけなんだ。そして、今回限りだ」
恐らく脅迫する輩も同じことを言うだろうが、俺の場合は本当だ。
俺は踵を返して兄の家へ向かう。
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