【#42】配信終了後。みんなで二次会
【雑司ヶ谷ダンジョン・フリールーム内】
「それじゃ、今日は色々ありましたけど~~……とりあえず、かんぱ~~~~~~い!!」
「「「「かんぱーい!!」」」」「ピィ~~!!」
今夜は焼肉!! クラフトで作りまくりの大盤振る舞いだ!!
あれから俺達は配信を終えた後、その流れで打ち上げする事になった。こういう時のフリールームであり、
「「「「ぷはーーーーーーーー!!」」」」
ゴクゴクとビールを飲んでゴキゲンになる、俺、ティーシャ、ラビスさん、フィオナさんの四人。
一方、ミカリアちゃんは──。
「みんな、良いわねー? お酒って飲んだ事ないけど、つかの間でも"バカ"になれるのは楽しそーね……」
ちょっとつまらなそうにプーっと頬を膨らませて、ジョッキに入れたコーラをチビチビと飲んでいた。可愛い……。
俺はその可愛さのあまり、ミカリアちゃんの小さな水色髪の頭をナデナデしてしまう。
「えへへ~。ミカリアちゃんも大人になったら分かりますよ~~?」
「ちょっ!? 酒クズ!? 急に頭撫でるのやめなさいよー!? セクハラで訴えるわよ!?」
まるで猛犬のように
そんな凶暴になった主人に対し、フィオナさんが
「まぁまぁ、ミカリア様ぁ~? よろしいではないですかぁ~?」「ピィ~~♪」
ドスドスと後ろから忍び寄る影──ギガント・シマエナガのフワンちゃんに騎乗したフィオナさんの姿があった。……いつの間に仲良くなったんだ?
アルコールで口元をニヤケさせたフィオナさんは、フワンちゃんの背中でモフモフしながら続ける。
「今日はアヤカ殿がMVPでしょう~。ミカリア様の神聖なる頭をナデナデする権利くらいはあると思いますぅ~~。ねぇ、フワン殿~~♪」
「ピィ~~」
「ったく、フィオナも飲むと一気にだらしなくなるんだから……!!」
「フン!」と不機嫌そうに腕組みするミカリアちゃん。だが、その口元はひそかに
なんだかんだで彼女も部下であるフィオナさんの事を想っているのだろう。ミカリアちゃん、やっぱ良い子だよなぁ……。
それからみんなはこんがり焼けた肉へと手を伸ばし、自然とワイワイ盛り上がった空気で食事が進んで行く。
やはり焼肉はいい!! まさに”男の子”って感じで!! ……まぁ、俺が本当は”男”なのは誰も知らないんだけど。
そんな中、ラビスさんが焼けたニンジンをかじりながら聞いてくる。
「ところで、酒クズパイセン? 実はちょっと気になってたんスけど~~」
「ん~~? なんでしょ~~?」
「ティーシャがハーフサキュバスだってコト、みんなビックリしたと思うスけど……なんか酒クズちゃんだけちょっと落ち着いてた感じだったッス。もしかして、前から知ってた……とか?」
なるほど、女の勘は鋭いな。
しかし、話してもいいんだろうか? とりあえず、ティーシャの指示を仰ぐか……。
「えっと……それは……」
それとなくティーシャの方へ目配せすると、彼女は恥ずかしそうにハーフサキュバスの翼を畳みながら言う。
「そ、そうだよ。アヤカちゃんとは……ちょっと”トラブル”があってこの姿を見られちゃったの」
「トラブル? 詳しく聞いてもいいッスか?」
「うん。あれは初めてアヤカちゃんとダンジョンに行った後に……」
それからティーシャは簡単な経緯を話した。
フリールームで二人きりの状況で、正体をバラされてしまったこと。
それで女性限定で効く魅了魔法でなかった事にしようとしたが、結局は妖刀によって防がれてしまったこと……。
「ふ~~ん。なるほどねぇ~~」
ミカリアちゃんは腕組みしながら話を聞き、ハァ~っと弱みを握ったように悪い笑みを浮かべた。
「”証拠隠滅のために魅了魔法を撃つ”なんて、ティーシャもなかなか悪魔の素質アリね? ──で、妖刀に防がれた後はどうなったの?」
「「え……?」」
俺とティーシャが同時に顔を見合わせる。
たしか妖刀で跳ね返した後、ティーシャが逆に魅了されてしまって……それで……それで!!
これ以上はマズいと察した俺達は、同時に首を振って叫んだ。
「「べ、別になにも!?!?」」
「むしろめちゃくちゃ怪しいッスよ!?」 「えぇ!! 絶対に何か隠しております!! このお
思いっきり問い詰めてくるラビスさんとフィオナさん。そんな二人に対し、俺達は口を閉ざすばかりだった。
(い、言えるワケがない!! 俺がティーシャに襲われたなんて!?)
そんな謎のピンチが訪れてしまったが、アハハと軽く笑ったミカリアちゃんに助けられた。
「ま、二人が”何もない”って言ったなら、何もなかったでいいんじゃない~♡ ──それよりも、ティーシャ。一度ミカリアに魅了魔法撃ってみなさいよ~?」
「……え? ミカリアちゃんに?」
「そっ。ミカリアも【
「なるほど。……でも、ミカリアちゃん? ホントにいいの??」
「ふっふん!! この天使の
「そ、そこまで言うなら……」
すると、ティーシャは久しぶりにサキュバスの瞳を見せながら、両手の指でハートを作るポーズで叫んだ。
「【ラヴ・ハート】!!」
「!!」
ティーシャの指から放たれた光線が、ミカリアちゃんに直撃する。
みんなが無言になった緊張の瞬間──やがて、フィオナさんが焦ったように聞いてくる。
「み、ミカリア様……?」
その呼びかけの直後だった。
「ふふふふ~~~♡ ティーシャぁ~~♡♡♡」
「「「「!?」」」」
たちまちティーシャへ抱き着いていくミカリアちゃん!! よく見ると、その瞳にはハート模様が刻まれていた……!! どう見ても魅了されている!!
「あぁ~~♡♡ ティーシャティーシャティーシャティーシャぁ~~~~~♡♡♡ しゅきしゅきぃ~~~~~♡♡♡」
「ちょ、ちょっと!? くすぐったいよ……!!」
正気を失ったミカリアちゃんは、ティーシャの胸に顔をくっつけるように密着していた!!
その甘える様子は年相応な感じで可愛かったが……これはティーシャも流石にヤバイと思ったらしい。急いで解除にはしった。
「か、解除!! 魅了解除!!」
「……ハッ!?」
パチンと指を鳴らす音で、どうにか元に戻れたミカリアちゃん。
顔を真っ赤にしたミカリアちゃんに、ティーシャが心配そうな顔で聞く。
「だ、大丈夫……? もう解除はしたけど──」
「ぎゃぁーーーーーー!? も、もしかして、ミカリアが魅了されたの!? そんな!? 今まで状態異常なんて全然効かなかったのに!?」
「……えぇ、恐ろしいですね」
フィオナさんは神妙な表情で頷き、それからティーシャの方を見て言う。
「流石は【色欲】の血を継ぐ者……というべきでしょうか」
「そうね、フィオナ。これは想定よりも強い魔法ね……って、フィオナ!? スマホ見てニヤニヤしてるの!?」
「あっ!? いや、これは……」
「貸しなさい!!」
バッと、奪い取るようにスマホを見るミカリアちゃん。そこに映ってたのは──。
「あーーーーーーー!?!? ちょっと!? 魅了されてるミカリアなんて撮ってどうするつもりなの!?」
問い詰められたフィオナさんは、滝汗を流しながらアワアワした表情で言う。
「い、いえ!? これは……その……個人的に使うためというか……」
「”使う”!? 何に使うのよーーーー!?!?!?」
ブチギレするミカリアちゃんに、必死に謝るフィオナさん。その光景がなんとも面白くてみんな笑ってしまった。
そんな感じでゆるい感じの空気になった二次会。一見すると、なんでもないような二次会。──でも、一つ確かめられてよかった事があった。
それはティーシャがハーフサキュバスだと分かった後も……みんながいつも通りに接してくれている事。
それがなんだか無性に嬉しくて、ますます酒が進んでしまう俺なのであった。
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