【#17】小休憩!洞窟のランチタイム!

「うわぁ〜!? これはすごいよ、アヤカちゃーーん!?」


 シートの上に広げられたキング・ロブスター肉を見て、興奮するティーシャとラビスさん。


「思ったよりおっきいねぇ〜〜♡ こんなの食べ切れるかなぁ……?」


「ホントにパネェ化け物ッス!! 酒クズパイセン、ほんとによく仕留めたッスね!?」

 

「いやー、だいぶ活きが良かったですからね〜!!」


 :画面越しでも伝わる迫力やべぇ……!!

 :泳ぎに来たつもりが思わぬ収穫だね

 :やっぱ酒クズちゃんって何か持ってるよなぁ……


 そんな風に場が温まって来た頃、ティーシャが調理用エプロンを着けながら気合を入れていた。


「よーし!! それじゃ、あたしも本気出しちゃおーかなー!? 滅多に手に入らない食材だし、久々に血がたぎるよーーー!!」


「おぉーーー!?」「ティーシャパイセン!! 頼りになるッス……!!」


 ついにティーシャの手料理が食べられるのか!! わくわく!!


 ◇◆◇◆◇


「ふっふーん♪ グツグツ♪ グツグツ♪」


 鼻歌まじりに煮えた大鍋をかき混ぜるティーシャ。


 鍋の中には巨大ロブスター肉が豪快に突っ込んであり、いいダシの匂いがキャンプ内に漂っていた。


 そんな中、俺は米炊き作業を任されていたのだが、横で野菜を切っていたラビスさんが驚いていた。


「わっ!? 酒クズパイセ〜ン!? お米の水が多すぎるッス!? それじゃ、ビチャビチャになっちゃうッスよー?」


「ひっ!? すいませ〜ん!? 今すぐ減らします〜〜!! うわぁ〜〜!!」


「そ、そんな深刻に謝らなくていいッスよ!?」


 うっ、いけない。昔からの謝り癖が……。女性に生まれ変わったとはいえ、たまに素が出てしまうのが俺である。


 幸い二人とも気にしてないようで、ティーシャが鍋を見ながらそれとなく聞いてくる。


「へぇ〜? アヤカちゃん、普段は料理とかしないの?」


「え、えぇ。お恥ずかしながら……料理もできないニートでした⭐︎」


 :可愛く言ってごまかすな

 :ま、イメージ通りだが

 :うん。全部コンビニで済ませてそうなイメージ

 :あんなに強くても生活力はヨワヨワなのね……


 その通り。そもそも生活力あったらニートになってない気がするし。


 ……とまぁ、そんな感じでティーシャが中心になって調理。簡単な作業は俺とラビスさんがサポートする。


 そうして、みんなでワイワイ話しながら調理が進み──。


「「「できたーーーーーー!!」」」


 ついに料理が完成した!! 今回作ったその料理を、ティーシャが両手を広げて紹介する。


「みんなーー!! 見て見て〜♪ ”キング・ロブスターの贅沢パエリア”でーーす!!」


 ホクホクとした湯気と共に、素晴らしい香りを伝えてくるパエリア。


 黄金色こがねいろに染まったお米の上に、こんがり焼けたキング・ロブスターの白身が豪快に乗っている。

 他にも野菜やダンジョンアサリなどが添えられていて、栄養バランスにも抜かりはない。


 :うぉ〜〜!? うまそぉー!?

 :絶対美味い!! もう見た目からヤバい!!

 :こういう新鮮なダンジョングルメ食えるのは、冒険者の役得やくとくってヤツだよなぁ〜


「それじゃ、アツアツなうちに食べちゃおうね〜♪」


 そんなできたてのパエリアを、ティーシャがキャンプテーブルの上へ配膳はいぜんしていく。


 今回は視界に広がる洞窟のあおみずうみを眺めながら、この素晴らしい料理をゆっくりと味わえるわけだ。


「それじゃ、みんな一緒に──」


 ティーシャは俺達の顔を見てから、「パン!」と両手を合わせて言った。


「「「いただきま~~す♪」」」


 それを合図に、俺は一心不乱でパエリアに向かった。そして、そのまま──パクッ!!


「ふぁ~~~美味すぎるぅ~~~~~~~~~♡♡♡」


 想像以上の美味しさだった!!


 キング・ロブスターの白身は非常にクリーミーで上品な味をしており、まるで”湖のステーキ”とでも言わんばかりにうまみが口の中に広がる!! これは病みつきになりそうだ!!


「んん~~♪ 最高ッス~~!!」「うんうん♪ 美味しすぎて食べ過ぎちゃうかも~~♪」


 二人もやはり満足しているようだった。同じ場所で同じモノを食べて楽しむ。

 単純だけど、心が豊かになる素晴らしい経験だと思った。


 さて、このパエリアだけでも十分贅沢ぜいたくなのだが、やはり俺には”これ”が必要だろう。


「ごめんなさい、みんな!! 酒クズちゃん、ワイン開けまーーーーーーーーーーす♡」


 俺は魔法カバンからボトルを取り出し、「ドン!」とテーブルの上に置いた!!


 :おっ、赤ワインだ!?

 :酒クズちゃん、ホントに準備良いなぁ……!? ただし、お酒に関するもの限定で

 :欲望に忠実なんだよな


「酒クズパイセーン!! 一人だけダンジョンで酒飲めるなんてズルいッス!!」


 隣のラビスさんがウサ耳を低くして『むぐぐ……』と俺を見つめた後、我慢できなくなったように言ってくる。


 確かに、普通は飲酒したままダンジョン探索なんてありえないからな。


「代わりに、ダンジョン終わった後も”飲み”付き合ってくださいッスよ~~!?」


「えぇ、もちろんですよ~~フフフ♡ 文字通り、いくらでも付き合ってあげますよぉ~~♪」


「やったッス!! 約束っスよ~~?」


 そんな軽い話を挟みながら、俺達はパエリアを夢中で食べた。


 これで心と身体の栄養補給完了──午後の探索も頑張ろう!!

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