【#16】VSキング・ロブスター!

(ひ、引きずり込まれるぅ〜〜!?)


 背後から奇襲してきた巨大なビッグ・ロブスター! いや、確かこの大きさだと出世して……"キング・ロブスター”だ!!


「ギシャァァアアア!!」


 そのまま湖に引きずり込まれていく俺!! どうやら水中へご案内するつもりらしい!?


 :酒クズちゃん、大丈夫かーーー!?


 水中へ連れて行かれる間、撮影ドローン(水陸両用)が追ってくる。その際、コメントが水中に投影されて俺にも見えた。


 :やべぇ!? さっきのよりデカいよ!?

 :ティーシャ!! ラビスー!! 助けに来てくれ!!

 :↑でも、こんな水中で揉み合ってちゃ助けるのも厳しいぞ!? せめて陸地に上がってもらわなきゃ……!!


「ギシャッ!! ギシャッ!!」


 獲物おれを狩場に引きずりこんだキング・ロブスターは、挟み込んだハサミにグーっと力を込めてくる。


 完全に痛めつけに来ている……!! コイツ!!


(この……舐めるなぁ!! 水中で呼吸はできないけど……お酒は補給できるんだぁーーー!!)


 俺は隠し持っていた"秘密兵器"を取り出した。水中でも飲めるストロー酒だ!! 手慣れた動きで素早くストローを刺し、俺は急いで口で吸い始めた!!


「ガボボボ……!!」


 :おぉ!? 水中で酒飲んでるーー!?

 :酒クズちゃん、準備よすぎか!?

 :どう考えても、偶然でしょうな……


 その通り。本当に偶然持ってただけ。だが、結果オーライというヤツだ。


 こうして十分に酒を補給した俺は、腰の妖刀へ手をかける。そして──。


(とりゃっ!!)


「ジャッ!?」


 俺はハサミの上から妖刀を突き刺した!! その一撃はかなりこたえたようで、ようやく俺の身体がハサミから離れた。──チャンス! 今のうちに水面まで上がる!!


「ぷはぁっ!!」


「あっ、アヤカちゃん出てきた!?」「今助けるッスよーー!!」


 岸の方からラビスさんが縄を投げてくる。だが──。


「ギシャァァァア!!」「うわっ!?」


 『逃がさん』とばかりに、キング・ロブスターが俺の着物を掴んできた!!


 どうやらキング・ロブスターはその痛みで余計に怒りを覚えたらしい。なかなかしつこい奴だな。


(いいだろう、こうなったら決着つけてやる!!)


 俺が妖刀を振るうと、キング・ロブスターはハサミを着物から外した。そして、そのまま泳いで距離を取ってきたのだが。


「ギィィィイイイイ!!」


(!! 速い!! デカいのに、よく動く!!)


 すぐにロケットのような勢いで突っ込んでくるキング・ロブスター!! 


 どうやら敵の本領は水中らしい。ただでさえ巨大ハサミにこの速度が加われば、恐ろしい威力になる事が想像できた。


 :あっ!? マズい!?

 :とにかく逃げろ!! また地上に戻るんだーー!!

 :そうだ!! 敵の得意なフィールドで戦う必要なんかねぇーー!!


 そう。普通ならこの状況、泳いで逃げるのが得策。だが、俺は──あえてその場にとどまった。


 :え?

 :おいおいおい

 :酒クズちゃん、このままじゃやられるぞ!?


(勝負は一瞬……!)


 もう敵は『完全に仕留められる』と思っているだろう。だが、そういう時こそ隙は生じるものだ。


 そう判断した俺は、妖刀をまっすぐに構えて間合いまで待った。そして──。

 

(でやぁっ!!)


「ギィィイ!?!?」


 ハサミが突っ込んでくるのに合わせ、俺は片方のハサミから切り落とした。


 :すげぇ!?

 :おぉ!! 綺麗なカウンター!!

 :いけるぞーーーーーー!!


「ギギギィ!!」


 キング・ロブスターは恨みとばかりに、もう片方のハサミを横にスイングしてくる。


 本能的な反射から来る大ぶりな攻撃だ。さっきよりも避ける事は簡単だった。当然、この隙を逃しはしない!!


(ここだっ!!)


 そのままキング・ロブスターのふところに潜り込んだ俺は、一番柔らかい部位である腹の辺りに狙いを定めた。そして──。


(いっけぇぇえええええええ!!)


「ギィィィ!? ギィ……ギィ……!!」


 腹部に向かって、鋭い一突きを見舞う。


 当然のようにキング・ロブスターはかなり暴れたが、完全に押さえ込んだ。しばらくすると、敵は黒い魔力となって消えていった……。


 そんな中、俺はとあるモノを見つける。


(お? あれは……?)


 敵が消えた後に残った”ドロップアイテム”。どうやらヤツがドロップしたものらしい。俺は”それ”を両手で抱えて水面へ浮上した。

 

「ぷはーーー!!」


「あっ!! アヤカちゃん、また戻ってきた!?」「酒クズパイセーン!?」


 呼びかけてくる二人に向かって、俺は戦利品のアイテム──『キング・ロブスター肉』を両手で掲げて叫んだ。

 

「みんなーー!! 勝ちましたーーーーーーーー!!」


「「やったーーーーーーーー!!」」


 :うおぉおおおおおおおお!!

 :流石は酒クズちゃんや!!

 :まさかあそこから単身で勝ちきるなんて……末恐ろしい女だな!?


 そう、俺自身もまさか勝ちきれるとは思わなかった。水中という不利もあって、相手していて焦った相手ではあった。


(──っていうか、またしてもこの階層にしては強敵だったような……?? まぁ、そういうこともあるのかなぁ……)


 とにかく戦いで動いたせいで、めちゃくちゃ腹が減った。ついでに酒も飲みたい。そして、ここには獲れたての『キング・ロブスター肉』がある。


 ──つまり、”昼飯の時間”ってことだ。

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