【#14】配信当日!! 遅刻!!

 そして、ついに池袋ダンジョン攻略決行当日! しくも、俺が配信を始めて一週間後の日だった。


 だから、今日は何事も心配なく気持ちよく配信しようと思ったのだが──。


【渋谷ダンジョン地下一階(フリールーム内)】


「だぁーーーーーーーーー!?!?!? 寝過ごしたぁーーーーーーー!?!?」


 さっそくやらかした。約束の時間の5分前に起きてしまったのだ。


 昨夜、この三人コラボでの配信の事を考えると全然眠れなくて、ついつい寝酒をしてしまったのが悪かった。気持ちが軽くなったのはいいものの、逆に寝すぎてしまったようだ!! ……やっぱ寝酒はよくないな。


 そして、スマホを見ると──ティーシャからNINEナインのメッセージが!! 


(あわわわわ!? ティーシャ、怒ってないかな!?)


 恐る恐るNINEナインを開いてみると……。


NINEナイン会話ログ】


 アヤカ:すいません!! 今起きました!! 


 ティーシャ:あっ、やっぱ寝てた?


 ティーシャ:あたしが転移魔法で迎えに来よっか?


 アヤカ:い、いえ!! それだとダンジョン探索前に魔力を無駄に使ってしまうことに……!!


 アヤカ:予定より少し遅れると思いますが、今からダッシュで向かいます!! それでもよろしいでしょうか……?


 ティーシャ:全然オッケーだよ!!


 ティーシャ:配信はもう始めとくけど、ラビスちゃんと場は繋いどくから安心して~。とにかく事故はないようにね!(スタンプ:『安全確認よし!』のポーズを取るミニティーシャ)


 アヤカ:も、申し訳ありません~~(スタンプ:必死に頭を下げるミニティーシャ)

 

「……と、とにかく急がないと!!」


 約束の集合時間まで、あと5分しかない。


 今、俺がいるのは渋谷ダンジョンであり、そこから電車を使っていくとなれば早くても20分はかかるだろう。多少の遅れは覚悟しなければならない。


「これとこれとこれとこれ~~~!! わ、忘れ物ないよなぁ~~!?」


 俺はバタバタと荷物をまとめ、フリールームの扉前に行く。そして、振り返ってギガント・シマエナガのフワンちゃんに声をかけた。


「それじゃ、行ってくるから!! フワンちゃん!!」


「ピィ!! ピィ!!」


「えっ!? なに!? ──うわっ!?」


 すると、フワンちゃんは体当たりで俺をフリールームから押し出した!? そして、フワンちゃんも一緒にダンジョンへ出ると。


「ピィ!!」


「”乗れ”って言ってるのか……?」


「ピィ~~~!!」


 ……遊んでいる時間はないのだが、なんだか強い意志を感じてしまった。


 俺はフワンちゃんに従うままに、フワフワもふもふの背中へと乗り込んだ。すると──!!


「ピィーーーーーーー!!」


「うおっ!? はやぁーーー!?」


 すごい勢いで、フワンちゃんが飛び出した!? うわぁぁあああああ!? フワンちゃん、見た目よりもすっげぇ速い!? 


 ──てゆーか、これちゃんと目的地まで行けるのか!?


◇◆◇◆◇


《ティーシャのぼうけん☆チャンネル、配信開始》


【池袋ダンジョン・地下1階】


『おはティシャ~♪』『おはラビ~ッス!!』


 :配信キタ!!

 :おはティシャ~~。ラビスもカワイイぞ~♪

 :あれ? 酒クズちゃんは?


『えっとねー、アヤカちゃんはちょっと遅れるよ!! どうやらついさっき起きたみたい!!』


 :草

 :どーせ昨夜も酒飲んでたんだろうな……

 :こーゆーだらしない所もらしいっちゃらしいが


『まー、そういうワケだから適当に話して待っとこうか? ね、ラビスちゃん?』


『いや、ちょっと待つッス……!? ティーシャパイセン、何か聞こえないッスか?』


『え? ──あっ、ホントだ!?』


 :確かになんか地鳴りのような音が……

 :だんだん大きくなってる?

 :おい、あっちの通路から来てないか!?


「うわぁぁああああああああああ!? フワンちゃん!? 止まって止まってぇ~~~~!?」


◇◆◇◆◇


「あ、アヤカちゃん!?」「酒クズパイセーン!?」


 爆速で走るフワンちゃんと共に現れた俺に、ティーシャとラビスさんは心底驚いているようだった。


 彼女達の姿を視界にとらえた俺は、必死に声を出して言った。


「フワンちゃん!! ストーーーーップ!! ストーーーーーーーップ!!」


「ピィーーーー!!」


「ぶはっ!?」


 フワンちゃんに投げ飛ばされる形で、俺はティーシャ達の元へとたどり着いた。忍装束を着たラビスさんが心配そうに手を伸ばして言う。


「だ、大丈夫ッスか!? 酒クズパイセン……?」

 

「お、遅れてすみません……」


 :すっげー!? フワンちゃんに乗ってきたのか!?

 :つーか、ギガント・シマエナガってあんなに速かったの!?

 :こんな派手な登場するなんて……流石は酒クズちゃん!! エンターテイナーですわ!!


「い、いやぁ~、そんなつもりはなかったんですけど……あはは」


 もう笑うしかないな、うん。


 やがてティーシャはフワンちゃんの身体を撫でつつ、興味深そうに猫耳をパタパタさせながら言う。


「へぇ~。”ギガント・シマエナガの足が速い”っていうのは知ってたけど、よくこんなに早く辿り着いたね?」


「それが……フワンちゃん。どうやら本能的にダンジョンの裏道を知ってたみたいで。以前に覚えたティーシャの匂いを参考に、渋谷ダンジョンから池袋ダンジョンに繋がる道を最短で行ってくれたみたいですね」


「えぇ!? マジッスか!? この子、頭良いッスねぇ~!?」


 驚き混じりに褒めるラビスさんに対し、フワンちゃんは『えっへん』って感じでドヤっていた。


 :かわいい~~♡

 :ゆるキャラと思いきや、結構できる子なのか!?

 :すぐ調子に乗るところも飼い主に似てるな!!

 

 やがて、ティーシャがメイド服のそでを触りながら気合いを入れるように言った。


「ま、とりあえずこれで全員集合かな?」  


「ハイ!」「うっす!!」


 元気に返事をする俺とラビスさん。それからテンション上がってきた俺は声高らかに宣言した。


「それじゃ、池袋ダンジョン攻略と行きましょうか~~~~!! そして、地底湖で泳ぎましょーーーー!!」


 :おぉーーーーーーーー!!

 :いよいよだな!!

 :てか、遅刻した酒クズちゃんが言うのか……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る