【#4】バズる!!酒クズちゃん!!

《ネットの反応》


 ・酒クズちゃん可愛すぎる!!!

 ・どう見てもだらしない女だけど、そこがいい〜!!

 ・また配信してくれ!! 頼むー!!


 D-LINE(ダンジョン特化SNS)


 :たるたる@ダンジョンインフルエンサー


 話題の”酒クズ女サムライ”について詳細


 ・妖刀を武器として使い、【酔剣すいけん】なるスキルを覚えている。本人いわく、”酒を飲むほど強くなる”とのこと。

 ・キマイラを軽々と撃破

 ・さらにダンジョン内で作れる異空間、アンダールームを手に入れる。しかも、魔力で物質を【クラフト】できる機能までついている。


 ↓返信


 >なんとおもしれ―女

 >写真見たけど、すげー可愛い……

 >とりあえずチャンネル登録しといた!!

 >突然彗星のように現れて……一体何者なんだ、この子は?


 ◇◆◇◆◇


「うわぁぁぁああああ!! やばぁぁあああああああ!!」


 フリールームのベッドの上で、俺は頭を抱えてジタバタしていた。

 

 ネットのどこを見ても、"酒クズちゃんおれ"の話をしている!! ようするに、めちゃくちゃ”バズってる”ってこと!! 


 ……今思えば、昨日はどうかしてたんだろう。これまでネットは見る専門だったのに、いきなりダンジョン配信してしまうなんて。


(やっぱ酒の勢いって怖い……)


 そうやってベッドに顔を押し付けていた頃、ピローン♪と通知が届いた。


《配信開始》ティーシャのぼうけん⭐︎チャンネル


(おぉおおおお!! "ティーシャ"の配信だ!!)


 ”推し”の通知に、たちまち心がおどる。


 ちょうどいいタイミングだった。そうそう、こういう大変な時こそ"推し"を見て心を癒そう……。


『おはティシャ~♪』


(うわっ! 今日もまぶしい……!!)


 ダンジョンの中で手を振る猫耳メイド服の美少女。


 このとんでもない美少女こそ、我が最推し──ティーシャ・クラリオン。登録者500万人超えの大人気ダンジョン配信者(Dチューバー)である。


 キラキラ輝く銀髪ミドルショートに、異世界種族『猫耳族キャトル』の証である二つの猫耳。

 顔は少し子供っぽく見える童顔で、くもり一つない青い瞳がこちらを見つめている。着ている服は白と黒のコントラストが美しいメイド服だ。


 そんな彼女はギルドが認めたSランクの魔法使いであり、実力と可愛さを兼ね備えた完璧美少女だった。


(あぁ……やっぱティーシャを見てる時が一番心安らぐな……)


 そして、ティーシャの最初の話題は──!!


『ねぇねぇ!! みんな、見た!? 話題の"酒クズ女サムライ"──アヤカちゃんのこと!?』


「ぐはぁあーーーーーーーーーーーーー!?」


 に、逃げ場はないのか。まぁ、そりゃそうだよな……。


 :おー、今ちょうど話題の!!

 :やっぱティーシャも気になる?


『うん!! あたしも話題になってたからアーカイブ見返したんだけど、配信中ずっとハチャメチャですっごい面白かったよ〜。チャンネル登録もしちゃった〜♪』


 :結構気に入ってそうで草

 :ダンジョン配信界に現れたダークホースだからね

 :へぇ。ティーシャがそこまで楽しそうにしてるなら見てみるか


『ぜひぜひ〜♪ あとでリンクも貼っとくねー』

 

 ティーシャは嬉しそうに笑った後、小さくため息をつくように言った。


『あ~あ、それにしても惚れ惚れする剣技だったなぁ……できることなら、直接お話を聞きたいよ』


(……えっ!?)


 :お!? コラボのフラグか!?

 :もし実現したら神回確定だな

 :酒クズちゃんとコンタクトは取れないの?


『そ、それは……一応、あのチャンネルにDM《ダイレクトメール》送ればいけると思うけど。でも、急にコラボ打診なんてされたらアヤカちゃん側も迷惑に思わないかな?』


 :大丈夫!! そんなコトないって!

 :ティーシャは謙虚だなぁ

 :とりあえず送ってみたら? 面白そうだし

 :そうそう。断られたら仕方ないってことで。


『むー。そうだね。このまま迷ってても何も動かないから。……ちょっと待ってて』


 そのままティーシャは文章をスマホに打ち始めた。


 彼女は『あーでもない、こーでもない』と悩みながら、慎重に文章を考えている様子だった。


 そして、数分後。


『よし!! できた!!』


 ティーシャはスマホを何度も見返して、リスナー達に確認するように言う。


『みんな、送るよ!? 今から送るよ!?』


 :キタキタキタ!!

 :行けーーーーーーー!!!


『それじゃ、送信!!』


 『えいっ!』と人差し指でタップするティーシャ。その後、彼女は恥ずかしがるように猫耳を両手で掴んで叫んだ。


『きゃっ!? 送った!! 送っちゃった!!』


 そして、その数秒後。


 ピローン!


 DM【コラボ打診のお知らせ】差出人:ティーシャ・クラリオン


「うわーーーーー!? マジで来たーーーーーーーーー!?」


 やべぇ!? 全身に鳥肌が……!? あのティーシャが、俺にDM送ってくるなんて……!!


(どーしよ!? どーしよ!?)


 流石になかなか決断できなかった。


 でも、他でもないティーシャの願い!! しかも、彼女に会えるんだ!! それも一対一で!! こんなチャンス、滅多にない……!!


「……よし、これでいい」


 そのまま悩んだあげく、俺は返信のDMを書いた。あとは送信するだけ。うおぉぉ、スマホを持つ手が震える!! 勇気を出せ、俺~~~!!


 ……ハイ、送信!! 


『あっ!? もうお返事きたよ!?』


:ウソ!?

:返事はえー!!

:この配信見てるんじゃね?

:ありそう

:それで、なんて書いてあったの??


『ちょっと待って。今から簡単に読むね〜。

 【"拝啓、ティーシャ・クラリオン様。わたしでよければ、ぜひコラボさせていただきます】……だって!!』


 そして、ティーシャは嬉しそうな表情で両腕を上げた。


『やったーーーーー!! アヤカちゃんとのコラボ決定だよーーーーーーーー!!』


:うおおおおおお!! 

:まさかのコラボ実現!!

:楽しみすぎる!!


 ……あぁ、ついにティーシャと会う約束をしてしまった!! ヤバすぎる……!!

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