第二十六話 部活勧誘会
その日の午後、体育館にて部活勧誘会があった。
部活自体には興味はないが、コピー対象としてマークしておくべき先輩が見つかるかもしれない。
体育館に着くと、既に一年生がたくさんおり、各々のクラスに分かれて座っていた。
俺もFクラスの列に並ぼうと体育館を歩く。
そんな時だった。
「おい、翔!1レベがこんな所に来ても入れる部活なんてねぇぞ!」
「ハッハッハッ!」
坂田達が俺を見て、大声で笑っている。
いや、別に入る気ないからいいんだけど。
「1レベってもしかして……」
「あれがザ・ワン……?」
「本当に1レベなの?」
「でもオーク倒したって聞いたぞ。1レベってのは嘘だろ」
坂田のせいで周りがガヤガヤと騒ぎ出す。
俺は気にすることなく、一人で端っこの方に座り、開始を待つ。
「チッ」
思ったのと違う反応だったのか、坂田達が舌打ちをして離れて行った。
何だったんだ。
そう思いながら俺は静かに部活紹介を待つ。
周りのクラスメイトや、他のクラスの生徒達は入る部活を楽しそうに話し合っている。
この学校は迷宮探索が主な活動なので、部活も通常の学校では絶対に見ないようなものが多々ある。
魔法研究部、剣術部、近距離戦闘研究部、遠距離戦闘研究部、支援魔法研究部といった、各々のスキルや立ち位置に合わせた部活から、この学校でも使われているポーションなどのダンジョン産アイテムを研究するマジックアイテム部や迷宮産のアイテムで作られる武器を作る武器作成部などがある。
逆にサッカー部や野球部といった普通の部活はほぼない。まさに迷宮のための学園だ。
そんなことを考えていると、壇上の照明が照らされ、一人の生徒が歩いてくる。
そして、中央に立つと、マイクを持って話し始める。
「ではこれより、新入生部活勧誘会を行う。知っての通り、この学園の部活は他の学園の部活とは全く異なるものだ。既に入りたい部活や、諸先輩方から勧誘を受けた者もいるだろう。迷宮初心者である君達にとって最速で強くなる方法は先人達に教えを受け、それを自分のものとして吸収することだ。それを念頭に置いた上で部活勧誘式を行う」
勧誘、という言葉を聞いてFクラスの生徒の何人かが首をキョロキョロと回している。
当然Fクラスの生徒に勧誘など来ていない。
可能性のあるFクラスの生徒は如月と文月くらいだが、そもそもこの場には来ていない。
部活勧誘会に来るかどうかは本人の自由意志だから来なくてもお咎めはない。
そうこうしているうちに、袴を着た生徒が一人、壇上に上がってくる。
「俺は剣術部主将赤崎研磨だ。知ってると思うがうちの剣術部は全迷宮学園の剣術部の中で最強。故に、雑魚はいらねぇ。覚醒度もステータスもどうでもいい!俺達に認められれば入れてやる!以上!」
短くそういって壇上から降りて行った。
早速クラスメイトや他のクラスの生徒達がガヤガヤと騒ぎ出す。
「あの先輩、剣聖を持ってる赤崎先輩だろ?やっべー、初めて見た!」
「ぜひ指導して欲しいな」
「俺、いけるかな?」
「無理じゃね?剣術系のスキルないと入れないってことじゃないか?」
隣の生徒達がそう話していた。なるほど、赤崎研磨、剣聖スキル持ちね。覚えたぞ。
それから次々と先輩達による演説が行われる。
説明の際、デモンストレーションを行う部活や、淡々と部活の活動と欲しい人材だけ述べる部活など、様々だ。
中でも俺が気になったのはスポンサー制度。
迷宮にて好成績を残したり、新たな発見などをすると、国や企業から部活や個人に対して補助金や奨学金という名のボーナスがもらえるのだそうだ。
それを目当てに部活に入るのもありだと先輩方は言っていた。
奨学金、補助金か。
俺は流石に貰う気はないが、頭に入れておこう。
次に出てきたのは、黒いローブに黒い帽子を被った、いかにも魔法使いの様な格好をした女子生徒だった。
「皆さん、こんにちは。魔法研究部部長、相園花美。私達魔法研究部は日々の魔法スキルの練習、各階層での最効率の方法や新たな魔法スキルの発見などを主な活動内容としている。入部条件は魔法系統のスキルを持っていること。以上」
淡々と抑揚のない声でそれだけ言って壇上を降りて行った。
うーん、これを説明会と呼んでいいのだろうか。あまりに淡々としすぎてて中身が入ってこない。
全く魅力に感じないが、こんなんで入る人なんているのだろうか。
そう思った矢先のことだった。目の前の生徒達が壇上から降りていく相園を指差しながら興奮した様に話し合っている。
「あれが……」
「ああ、深淵の花、相園先輩だ」
「闇魔法レベル3を持ってるらしいぞ!」
「ああ、しかも風魔法まで!くー天は二物を与えないんじゃなかったのかよー!」
「風魔法でいいからくれって感じだよなー!」
……へー。
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