第十二話 目覚め
「え?」
突然の感謝の言葉に、星空は戸惑っている。だが、俺はニヤけるのが止まらない。
「どうしたの?体調でも悪いの?それにありがとうって、何が?」
俯いた俺を心配して、星空が声をかけてくる。
だが、俺は顔が隠れているのをいい事に前を歩き、誤魔化す。
「すまん。何でもない。じゃあここで。俺はちょっと用事あるから先帰ってくれ!じゃあな!」
「え、なに?どういう事!?え、ちょっと!」
事情を聞いてくる星空をいなし、俺は鑑定石の元に急いだ。
そして、鑑定石の前に立った俺は深呼吸をする。流石に緊張する。心臓の鼓動がうるさい。
こんなに緊張したのは正直記憶にないくらいだ。
「よし!」
俺は意を決して鑑定石を作動させる。
[小鳥遊翔/レベル7]
[覚醒度:28%]
物理攻撃力 9
魔法攻撃力 15
防御力 12
敏捷性 10
[スキル]
雷魔法 レベル2
魔法攻撃力上昇 レベル1
敏捷性上昇 レベル1
「よーし!」
叫びこそしなかったが、俺は硬く握り拳をしてガッツポーズをする。
案の定、俺は星空のステータスをコピーしていた。ステータス、スキル、覚醒度、その全てにおいてトップクラス。
俺は星空のクラスを聞いていなかったが、このステータスを見たらわかる。SはなくともAかBクラスだと思っていたが、ステータスを見る限り、間違いなくAクラス。しかもトップレベルだろう。
覚醒度がもう2、3パー上がれば後期にはSクラス行きも夢ではないはずだ。
7レベルでスキル3つに平均的に高いステータス。彼女の才能の高さが伺える。
自身のステータスが確かに変わっていることを確認し、そのまま寮の自室に戻る。
紙は発行しなかった。何故なら、学校側に更新した俺のデータが残ってしまうから。
鑑定石で鑑定しただけでは何も証拠は残らないが、データを打ち込むと、そのデータがパソコンに残ってしまう。
それを学校側に知られれば、あれこれと煩わしい事がどんどん出てくるだろう。
人付き合いの面倒くささ、理不尽さはつい先日知ったばかりだ。ならば俺はFクラス最弱にして学年最低ステータスとして空気に過ごすのが、一番穏当な手段だと考えたからだ。
そのまま寮の部屋に戻った俺は、荷物を置き共有の風呂場で体を洗ってから湯に浸かる。
俺以外はちらほらとしか生徒がいない。この寮はFクラス用の寮とはいえ、この時間、3年生も含めて迷宮に狩りに出かけているのだろう。
この学園にくる人間は基本的に迷宮へのモチベーションが高く、学力もそこそこある人間だ。
それは三年生のFクラスの先輩であっても変わらない。俺のように早々に探索者を諦める人間は少ないということだ。
そんなことを思いながら、タイルの天井を見上げ一息つく。
「ふぅーー……」
今の俺の状態はどうなっているのだろうか。
俺のステータスは確かに変わっていた。状況、雷魔法というスキルから考えても今の俺は星空のステータスをコピーした状態で間違いないだろう。
だが、ここで謎が残る。
坂田のステータスはどこに行ったのか。
まさか上書きしたのではあるまいか。つまりは最初、俺のステータスを坂田のステータスで上書き。その後、上書きした坂田のステータスを星空のステータスで上書きした。
つまりは俺のステータスと坂田のステータスは無へと消え去ってしまったのだろうか。
いや、そんな筈はない。5レベになったら急に一度だけステータスを上書きコピー出来るようになった、などというのはあまりにおかしな話だ。じゃあ次は10レベルか。その次は15レベルか。
ならば最初から最強ステータスの人間をコピーすればそれで終わる。
そんなことあるはずがないだろう。
それよりも、今俺は俺自身のステータス、坂田明人のステータス、そして星空恵のステータスを保有している、と考える方が自然だ。
つまりはレベルが上がったことでコピーし、保存できるステータスが増えた、という考えだ。
「ふぅー……」
俺は風呂から上がり、自室に戻り、ベットに横たわる。
問題は俺の本当のステータスの見方や、坂田のステータスへの変え方。
鑑定石で見えないそれを見るにはどうすればいいのだろうか。
方法はない、などということは考えられない。色々調べたが、このステータス、スキルのシステムは平等で理不尽のないものだ。
そのステータスを与えられたものは同じ力が使えるし、同じスキルを持てば同じ事ができる。
だが、今の俺には自分の本当のステータスを確認するという誰でもできる事が出来ないという理不尽な目に合っている。
本来はその変更するスキルを確認するため、最初に俺、小鳥遊翔自身のステータスを鑑定石を確認するはずだったのだろう。
しかし、俺は自分のステータスを確認する前に坂田のステータスをコピーしてしまった。
ならば、それを戻す方法がある。
以前、俺は一度その言葉、坂田のステータスを削除するための言葉を唱え、諦めていた。
しかし、今回は考え方を変える。俺は今2つのステータスを保有している。だから、削除するのではない。
変更するのだ。
「チューズ、ピックアウト、テイク、チェンジ、エクスチェンジ……」
スマホで辞書を用意し、思いつく限りの言葉を入れて唱える。
そして……俺はとうとうその言葉を見つけ出した。
「
[小鳥遊翔/レベル7][選択:星空恵]
[覚醒度:28%]
物理攻撃力 9
魔法攻撃力 15
防御力 12
敏捷性 10
[スキル][選択:星空恵]
雷魔法 レベル2
魔法攻撃力上昇 レベル1
敏捷性上昇 レベル1
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