Eintragung

先ほどランサー・パクトに所属している人物との会話に使用した携帯電話を、

ジャッカルはまだ持っていた。


「…なんで携帯電話単体で落ちていたんだろうか、このゲーム本来ならデスしたら携帯も一緒に自分の元に戻ると書いてあった筈なんだが…」


「確かに不可解だな。まあ、誰かが意図的に置いていったみたいなことがあったんだろう。この携帯電話はしっかりポケットに入れないと持っているだけじゃ落ちてしまうからな。でもそんな急に誰かに襲われて逃げても携帯とかはしっかりしまっていたらあんなところに無いはずだ。」

車を走らせながらネフィリアはそう言った。


「とりあえず、電話の向こうの奴と会ったときにこれを一応渡しておくか…詳細も

聞きたいしな。っと…さて」

車はフランスの国境を越え、ついにドイツ国内へと入った。


先ほどのフランスのように人がおらずすっからかんだと思っていたが、街道では人が行き交い、商店を営んでいるものがいた。しかも、それはよく見るとNPCの表示がある。

「すごいな、これ全部プログラムが設定されて動いてるのか?人々が色んな所で

生活してるぞ…あ、あそこで回復用のアイテムとかも売ってるな…」


「この量のNPCをランサー・パクトは買うほどの財力を持っていると…思ったんだが、もしあのNPCに攻撃したらどうなるんだ?」


「恐らく、周りのNPCが撃った人物を敵と見做すように設定されていそうだから

やってしまったらすぐに蜂の巣だな。」

今ヴィクターが言ったように、ランサー・パクト勢力内の土地にいるNPCたちは

全員何かしらの銃火器を持っており、

一歩判断を間違えばすぐにロストしてしまう危険なものだった。


先ほどいた街を抜け、また平原を走る。

「やっぱり、ここまでやり込む人が沢山いるランサー・パクトはヨーロッパだけでなく世界でも強いのか?となると会う予定の人はどんだけ強いんだ…」

とよく考えてみるとこれから会うランサー・パクトの人物も結構な強さであると 

ジャックは想像する。

よく見ると、行き先が書いてあった紙の裏側に名前が書いてあった。

by Spiegel Sieglindeシュピーゲル・ジークリンデから


「とにかく会ってみないと分からないな。

…と、やっと着いたか。」

気がつくと、目の前にはヘスコ防壁で囲まれた土地があり、その先に検問ゲートがあった。


ゲートを通ろうとするとそこにいたプレイヤーに止められ、要件を言うようにいわれる。「入隊を希望したい、ジークリンデ氏から許可を得ている」

と言うと慌ててゲートを開けてくれ、先へ

行くことが出来た。結構上の階級の人なんだろう。


中には結構な数のプレイヤーや兵器、装甲車、ヘリコプターなどがあっていつでも緊急出動などが出来そうな雰囲気である。

「ジークリンデさんから直接許可が出てるのですか…通行していいですよ」

進むにつれ道中でまた検問があったが、

その時にまた説明したら少し驚いて反応され、その後無事に大きめの建物についた。

コンテナ建築のようだが、中に入るとしっかり部屋分けや会議室などが作られて

いる。


建物内を探索し、シュピーゲル・ジークリンデ中尉の表札が書いてある部屋に

ノックをして「失礼します」と言ってから入った。

部屋の鍵は開いていたのだが中には誰もいない。

「おそらく何かしらの会議中なんじゃないのか?」


「確かに...なんの物音もしないし、書類関係も置いてない...あ、ふっふっふ...」

すると急にネフィリアが悪い笑みを浮かべている。


「...おい、何をする気だよ。」

とは言っているジャッカルも、ネフィーが何をするのか大体予想がつく。

途端にネフィリアは部屋を漁り始めた。デスクの中やクローゼットなどありと

あらゆるところから物品を取り出している。


「ばれなければ犯罪じゃないんだよ...さて、今度はこっちか、な"っ"!?」

と別のクローゼットの扉を開けようとすると、そこからネフィリアの顔面に

飛び蹴りがクリーンヒットしてネフィリアが部屋の反対まで吹き飛ばされる。


「...さ~て、誰だあ?私の部屋を漁る奴は...」

クローゼットの中から出てきたのは日本でいう中学生にいくかいかないかぐらいの

身長の少女で、かわいらしいがその顔は現在般若のように恐ろしくなっている。

すぐにネフィリアを起こして謝らせ物品を返さないと今にでも粛清されそうな

予感だ。


ここで対応を誤ると入隊すら出来なくなってしまう可能性があるので、

慌ててHPが半分くらいになってふらふらしているネフィリアを叩き起こし、すぐに

彼女が漁った物品を机の上に出して謝る。


「あ、すぐに謝ってくれるならいいんだ。そのまましらを切ってるなら

もうちょっと殴れてすっきりできたんだがな、まあいい。お前たちが

先ほどの電話の主か...あったらなんだが、さっき通話したケータイは持ってるか?」

般若のような顔が消え、穏やかな気持ちでこちらを見た。ちょっと物騒な言葉が聞こえた気がするが、それは気にせずジャッカルは彼女ジークリンデへと仕舞っていた携帯電話を渡す。


「...ありがとう。さて、私からまず自己紹介といこうか。私はシュピーゲル・ジークリンデだ。ここの基地の管理人で、一応中尉だ。さっきの地区にあった支部は

よく浄化者たちに襲撃されていて、さすがに耐えきれなかったようだな。

まあ今度はあそこを制圧できるようにある程度の兵を送るが...

さて、お前たちの名前は?」

中尉というと、軍のなかでも結構上の階級、大隊長などを任される役柄でその実力がどのくらい強いかはっきり分かった。


「名前か。ジャッカル。ジャックと呼んでくれて構わない」


「急に蹴られるとはびっくりしたが…ネフィリアだ。」


「ヴィクター、俺は元軍人でな。此奴らの中なら1番強い自信があるぞ。」

と次々自己紹介をする。


「なるほど。一応このゲームはまた初心者らしいな。でも、FPSゲームは以前からやっていたから浄化者達をなんとか撃退できたと。となると実力は確かに本物か…

よし、分かった。入隊を許可する。私には権限があるから今からでもすぐに入れることが出来るからな。」

と、このゲームをやる前の経緯と今までの

経過を話した後、即入隊が決定した。

通常は入隊を希望してから上に伝わりしっかり入隊出来るのに三日程掛かるらしいが、今回はジークリンデが権限を持っているから奇跡的にすぐに入れた。


入隊を確認した後、三人は一旦ゲームから

ログアウトして休憩をとる。


「それにしても中尉か…実力の方も相当だろうし、俺達三人で歯向かっても全く勝てそうにない、それ以上に100人以上かかっても無駄死にしそうだな…」


ネフィリアがジークリンデのことを調べていると、こんな記事があった。

「…ん?あ、調べたらジークリンデについてのwikiが出てきたぞ。

何々…”過去に一日に一万人以上のプレイヤーをキルすることにより獲得できる称号

処刑人executioner』入手済み”…!?」

どうやらジャッカルの予想通り、途轍もない実力の持ち主だったようだ。

勢力に入った者のみが見れるwikiにはほかにも多数の下級将校クラスのプレイヤーの詳細や組織の情報が載っている。


「とりあえず、これで後ろ盾は得たな。

快適なプレイがやっとできるようになった。」



そして話は中国に戻り...


=============

はい作者です。前回より文字数少ないんですよね~...若干前回よりアイデアが浮かばなくて困ってまして、ちょっと期間あきました。

そしてやっと天音パートに戻ってきます~

ね?そろそろあっちも進めなきゃさすがにあかんでしょ?

ということで、次回から中国編再開していきますよっと...

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