宴と話
戦いから一週間後、なんとか敵兵を押し戻し撤退させることに成功し
後処理をしてから祝杯をあげることができた。
「いやあ、なんとか撤退させられてよかった。というか地面から土を掘る戦略って...」
「それまだ言ってるの?まあ今はとりあえず祝杯といこうよ。」
夜間、まだ壊れた建物が残る復興拠点にて天音たちはビール缶を持っていた。
「それにしてもたった一週間で敵を撤退させることができるとは...どうやら短期間のうちに質が良くなったらしいな。他の支部も。」
出動時点で新潟県三条市あたりまで侵攻されていたのだが、ほかのチームの練度が思っていたよりも高く、驚異的な速度で奪還でき奴らを撤退させたのだ。
「どうやら初めて間もないやつらが多かったんだろうな。そして生存意欲が別にあったから、すぐに撤退しちまった。しっかりそういうのは鍛え上げてから敵地に送るってのに、相手側は時期を間違えたな。」
正直、今まで相手したことある人のほうが単体でも強かった。でも今回の敵の軍勢は下手に群れて攻撃が当たりやすく、一小隊をすぐに殲滅できるぐらいだ。
「とりあえず、乾杯するか。」
ニコライの一声によって、賑やかな祝杯が幕を開けた。
「あれ、そういえば天音って酒飲んじゃダメなんじゃない?見た感じ成人してなさそうだし。」
「いやこれでも中身は成人してるよ?それよりも一夏のほうが飲んじゃダメなんじゃないの?正直言ったら私より年齢(アバターの)低いし」
「そういう問題じゃなくて!」
と楽しい会話を繰り広げていた。周囲では他の兵士たちも食事も楽しんでいるらしい。
「...ところで、だいぶ飲むな...全く酔っているように見えないんだが?」
え?と横をよく見ると、すでにロング缶のビールを5本も飲んでしまっている。あんまり飲んでる気がなかったのだがこれはやばい。だが酔っぱらっている感覚は全く
ないので驚異的な肝機能が備わっているということになるだろう。
「あ~旨いは旨いんだけど酔えないっぽい。」
「ザルか...」若干引きながらも周りは飲んでいた。
一夏は酒にはあんまり強くないみたいで、4,5杯飲んだだけでべろべろだ
「一夏に酒飲ませて大丈夫だったのかニコライ?」
酒が飲めずコーヒーを飲むニコライに問う。
「本人が飲みたいって言ってたから仕方ないだろ。どうせこの世界に法律みたいなもんは存在しないしな。」
「かといって...いやあとで介抱するか。」
私は大人なのだ、こんな子供の世話など容易い!
「すごい何考えてるのかわかりやすい顔してるんだけど。」
気づくと目の前にいつの間にか一夏がいた。やっぱりまったく気配がない。
「そ、そんな子供扱いするとかそんなことないし...」
「本心ダダ洩れじゃないの...」
と内心呆れてそうにカルパスを食べていた。
飲み始めてもう二時間経ったのだが、私以外はほぼ泥酔状態でこれ以上酒を進めるとだいぶまずい状況になりそうなので、とりあえずチームのみんなをニコライと一緒に寝かせることにした。
「一夏の中身は十中八九未成年だろうな、虐待を受けていたといってたし」
「何?虐待されていたのか?一夏が」
おっと、ニコライはこのことを聞かされてなかったみたいだ。
「ああ、少し聞いたんだが多分家庭内暴力とかが絶えなくて、それでゲームとかに逃げてたらこの世界に閉じ込められてこうなったんだろうな...スキンがこういう若干可愛くて魔法少女っぽいのも服とかまともなものもなくてテレビであったものとかもねだっても買ってくれなかったんだろう。多分両親が子供が泣きわめくのが煩いから
ゲームだけ買って黙らせたっていうことかな...」
若干話していて表情が自然と暗くなってくる。他人の話をしているのに心が悲しくなっているのか。いや、自分でもそういう子を見たことが以前にもあった。学校では楽しそうにしているけど、家では虚無のようにゲームをして生きている家族。
学生時代の時そういう後輩がいた。そのことを聞いたが助けることもできず、
卒業した数年後に自殺したことを知って一人ですすり泣いてた。
自然と涙が出てくる。今になってまた後悔することでもないのに。
「おい、お前のことじゃないだろ。なぜそこまで悲しむ必要がある。」
「だって...ほかの人が何か嫌なことをされてて...その時何もできなくてその人の人生を正しくできなかったら...自分が悪かったような気分で...どうしても...」
情けない。行動すればよかったのにと思えてくる。
「...起きたことは仕方ない、だが、それをまた起こすのが駄目なんだ。一度経験してあるからこそ行動しようと思うんだろ?だから、今後そういうことを二度とおこさないようにするんだ。今からでも遅くないと思え。ネガティブな方向に考えたらそこから状況は悪い方向へと向かう。なるべくいい方向へ考えるんだ。いいか?」
ニコライが説教するように語りかけてきた。そうか、今からでも遅くないのか。
今でもまだ危機に瀕した時でも助けれる人はいる。自分も助けられるんだ。
そうすると涙が収まってくる。
「あと、お前は酒飲みすぎだ。今度からは普通に水にしてくれ。酔わずに飲み続けるのもあんまり楽しくない。」
...さっきのつぶやきは、酒に酔ってたから出たのかもしれないな。
今度からは普通にソフトドリンクとか水にしよう...
二日後、拠点に帰ってきた。やはり自分の部屋というものは落ち着くものだ。
(まだ一夜しか寝てなかったけど)
一夏は二日酔いが続いているようでまだ頭が痛いらしい。子供にしか見えなかったしね。中身がどうであれ、この世界に精神が閉じ込められた以上楽しんだもん勝ち。
人生とは本来楽しむものなのだ。そう割り切って、その日は一人
部屋で惰眠を貪ろう...としたのだが一夏に強制的に連れられ、そこから
また地獄の特訓を受けることになったのだ。
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作者です。ここから若干柔らかいペースになります。多分。
戦闘の箇所をもう少し書いてほしければ、phase1.50を出してそこで書くと思うので
よろしくお願いします!
あと多雨街とは時系列が同じのクロスオーバー作品にしたいですね。
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