5.あなたはもう……大丈夫だね

 かすユウの配信の最中。


 SE:落ち着いたBGM(薄っすらと流れている)


 はこれまで、何十回もユウの配信を視聴して(常連リスナーになって)おり、彼女との距離感も少し近くなっている。

 ゆえに今まで以上に、和やかな雰囲気。


 (微笑んだ後に、ふと気がつき)

「あ……もう二時間も経ってる。そろそろ寝ないと明日、起きれなくなっちゃうよね?」


 SE:フリック音


「明日はお休み? それならよかった」


「そういえば、最近はよく眠れてる?」


 SE:フリック音


「そっか。自然に眠れるようになったんだ。よかった」


「それならもう、わたしの子守唄は必要ないね?」


 SE:フリック音


「『子守唄がなくても眠れるけど、ユウちゃんとこうやって話すのが楽しいから、これからも配信は見るよ』」


「ふふっ……ありがと。でも、無理はしないで? 眠たい時はしっかり寝てね?」


 SE:フリック音


「『大丈夫、無理はしてないよ。僕がユウちゃんに会いたいと思って、会いに来てるだけだから』」


「そっか……ありがと」


 SE:フリック音


「『でも回数は減っちゃうかも……最近は、自然と二時前に眠ってしまう事もあるから……ごめん』」


「ふふっ……謝らないで? 自然と眠れるのはいいコトなんだから。無理のない範囲で、会いにきてくれたらいいからね?」


 SE:フリック音


「『ありがとう』」


「『それにしても』」


 (少しショックを受けたように)

「『長年やってて、どうして毎回、視聴者は僕一人なんだろう』って……」


「も〜ちょっと気にしてるトコをツツかないでよ〜」


 SE:フリック音


「『違う違う。こんなに視聴者に寄り添った配信をしてる子なのに、どうして他にリスナーがいないのかなって純粋な疑問』」


 (嬉しそうに)

「へへっ……そっか。ありがとう」


 (とぼけた感じで)

「うーん……なんでだろうね? まぁ、絶対に深夜二時に配信してるってのも、原因の一つかな?」


 SE:フリック音


「『案外、起きてる人はいる気がするけどな……』」


「う〜ん、確かにこれまでも、配信を見てくれてたリスナーさんはいたんだけどね? 皆、自然に眠れるようになって、しばらくすると来なくなっちゃたんだよね〜」


 SE:フリック音


「ふふっ……怒ってくれてありがと。でもいいの。わたしはそれで満足だから」


「皆の心が元気になって、わたしなしでも毎日、自然と眠れて……幸せに暮らしているなら、ね?」


「それがわたし自身のためにもなるから、本当にいいの」


 SE:フリック音


「『僕はそれでも会いに来るよ』」


「ふふっ……うん、ありがと。そう言ってくれてうれしい」


 SE:フリック音


「うん……こちらこそ……これからも、よろしくね?」


 SE:風鈴の音が鳴り、それが反響する

 SE:フリック音


「ふふっ……急に眠気が襲ってきたんだ? それじゃあ、今日はもうお開きにしよっか?」


 SE:フリック音


「うん。こちらこそ、ありがと」


 SE:風鈴の音が鳴り、それが反響する


「……折角だし、今日も子守唄を歌っちゃうね?」


 (囁き声)

「もうコメントのコトは気にしないで、横になって?」


 (囁き声)

「目を閉じてね? おやすみなさい、


 優しく穏やかだが、いつもと少し違う悲しげな子守唄(鼻歌)がしばらくの間、聞こえる。


 (少し寂しげに)

「……はもうわたしがいなくても大丈夫だね」


「今までありがと。わたしのコトは忘れてね?」


のこれからの人生が、どうかいいものでありますように」


「バイバイ」


 SE:風鈴の音(数回)


 (風鈴の音に応えるように)

「うん……。わたしには“あなた”がついてるもんね? ありがと」


「“れいちゃん”」


 SE:風鈴の音

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