4.丑三つ時の森で遊ぼ?

 生い茂る木々に囲まれた自然の中。

 青い炎が揺らめいているように見える、丸い形のガーデンライトがいくつかある。

 いつものBGMは流れていない。


 SE:川のせせらぎ

 SE:鈴虫の鳴き声


「こんばんは~。本日の配信は特別版。学校を飛び出して、近所の森の中でお送りしちゃうね?」


「題して、“かすユウの丑三つ森”だよ~」


 SE:風鈴の音(いつもより小さく)

 SE:フリック音


「『それは設定? それとも実際に外なの?』って……も~そんな野暮なコト聞かないの。そこはご想像にお任せってコトで」


 SE:フリック音


「『本当に外なら心配』って言われてもなぁ……」


 SE:風鈴の音(いつもより小さく)


「むむっ……仕方ないから白状するよ。この背景は映像で、わたしが今いる場所はお家だから安心して? 音はもちろん、全部SEだよ~」


 SE:風鈴の音(いつもより小さく)


が初めて、わたしの配信を見てくれた日に言ったでしょ? 『今度、自然の中で配信しちゃおうかな』とか、『いろいろ準備しておくから楽しみにしててね』って。その準備って言うのが、この背景とSEだよ〜」


 (おどけたように)

「そしてそして……これらのコトは今すぐに忘れるのです。忘れて自然の中にいる気分を存分に味わうのですよ」


 SE:フリック音


「ふふっ……よろしい」


「それじゃあ、わたしも自然の中にいるつもりで、今日の配信を再スタートするね?」


 SE:フリック音


「ふふっ……ありがと。ではでは……」


 (可愛く咳払いをする)

「こほん……」


「こんばんは~。本日の配信は特別版。学校を飛び出して、近所の森の中でお送りしちゃうね?」


「題して、“かすユウの丑三つ森”だよ~」


 SE:風鈴の音(いつもより小さく)


「今日はわたしと丑三つ時の森で遊ぼ?」


 SE:フリック音


、いらっしゃい。いつもありがと。今日は自然の中で、たくさん癒されていってね?」


 SE:フリック音


「わたしの周りにあるのはね〜ガーデンライトだよ〜。青い炎が揺らめいているみたいに見えて、キレイでしょ?」


 SE:フリック音


「ふふっ……火の玉みたい? 言われてみればそうだね?」


「あ、蛍だぁ……」


 SE:鈴虫の鳴き声


「鈴虫もいるね? キレイな声……川のせせらぎも良い音だなぁ……」


「……ねぇ、少しの間だけ、静かに聞いていよっか?」


 SE:フリック音


「ふふっ……ありがと」


 SE:川のせせらぎ

 SE:鈴虫の鳴き声


 (数秒後)


「ふふっ……なんだか落ち着くね?」


 SE:フリック音


「ふふっ……あ、見て見て。この澄んだキレイな川。魚も泳いでるよ?」


SE:川のせせらぎ(少し大きく)

SE:フリック音


「あ、薄暗くて、流石に画面越しだと見えずらいかぁ……ごめんね」


 SE:慌てたようなフリック音


「え……どうしたの? 落ち着いて?」


 SE:動揺しているようなフリック音


「へ……? 血みたいな、赤い液体が流れてた? わたしには見えなかったけど……魚と見間違えたんじゃないかな?」


 SE:フリック音

 SE:風鈴の音(いつもより小さく)


「あ〜と……わたしがこれを言うのはちょっとあれなんだけど……この背景は映像だからさ? 映像が乱れて、魚がそんな風に見えたんじゃないかな……?」


 (少しの間)


 SE:落ち着いたフリック音


「うん。いろいろとごめんね?」


 SE:フリック音


「ふふっ……ありがと。何だかんだで、いつもに甘えちゃってごめんね?」


 SE:フリック音


「ありがと。じゃあ、改めて……」


 (可愛く咳払いをする)

「こほん……」


「あ、見て。星空もキレイだよ」


 SE:フリック音


「ふふっ……星空を見てたら、ぜろちゃんと昔、作った御伽噺を思い出しちゃうな」


 SE:フリック音


「少し長い話だから要約するとね……」


「名家に引き取られた少女が、異母きょうだいに劣等感を抱き、血が繋がっていない母親や祖母に疎まれながらも、大切な存在と懸命に生きる物語なんだけどね?」


「大切な存在との別れも経験して、望まぬ相手と結婚させられそうにもなるの。だけど、愛する人が手を取ってくれて、一緒に遠くへ逃げてくれた。そして、その場所で二人は結ばれて、幸せになった……そんな御伽噺だよ」


 SE:フリック音


「うん、悲しい事があっても、それを乗り越えた先にハッピーエンドが待ってるって……。そう信じたくて、ぜろちゃんと、夜空を見上げながら作った話なんだ〜」


 SE:フリック音


「『僕も乗り越えられるかな?』」


「うん。優しいなら大丈夫。時間がかかっても、きっと乗り越えられるよ。そして、その先には幸せが待ってる。わたしはそう信じてるよ」


 SE:フリック音


「うん。それまではわたしを頼って? わたしにはしかできないけど、何度だってに癒しを届けるよ」


 SE:フリック音


「ふふっ……こちらこそ、ありがと」


 SE:フリック音


「ふふっ……安心したら眠くなってきた?」


「それなら良かった。じゃあ、今日も子守唄を歌っちゃおうかな?」


 SE:フリック音


「いつも歌ってる子守唄はね、オリジナルだよ〜。って言っても作ったのはわたしじゃなくて、おじいちゃんだけどね」


「わたしが小さい時、眠れない日は必ず歌ってくれた、思い出の子守唄なんだぁ」


 SE:フリック音


にも気に入ってもらえててよかった。なんだか安心する曲だよね?」


 SE:フリック音


 (心底、嬉しそうに)

「わたしの歌声も安心する? ふふっ……ありがと。うれしい」


「それじゃあ、今日も横になって……ゆっくり目を閉じて?」


 (囁き声で悪戯っぽく)

「今日は川のせせらぎと鈴虫も一緒に歌ってくれるみたいだよ?」


 しばらくの間、優しく穏やかな子守唄(鼻歌)が聞こえる。


 (囁き声)

「おやすみなさい。は……あともう少しで大丈夫そうだね? よかった……」


 SE:風鈴の音

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